【詩】砂漠の神話
悠月
砂漠の神話
これはいにしえの物語
聖書より昔に忘れられた神話──
昔、砂漠の小さな国が滅んだ
亡国の民となった人々のなかに、
双子の少年と少女がいた
少年は父に連れられて東の国へ、
少女は母に連れられて西の国へ行った
彼らは再び会うことはなかった
それから千年の時が経った
少年の子孫は東の国の王族となっていた
少女の末裔は西の国の奴隷となった
東の国には革命が起こり、
西の国には洪水が襲った
少年の子らは国を追われた
少女の子らは国を失った
東の国の王女は、砂漠で流浪の民となった
西の国の奴隷の少年は、砂漠で渇いた自由を手に入れた
東の民と西の民は
砂漠に新たな国を建設した
彼らは吹き抜ける風を信仰し
夜風と砂に生贄を捧げた
生贄は美しい少年と
美しい少女と定められた
東と西のそれぞれの民から
少女と少年が選ばれた
手首に食い込む荒縄でつながれ
東の少女と西の少年は、
そして千年の再会を果たした
かれらに許された最後の夜に
かれらは砂丘で空を見上げた
少女は、遠いとおい少年の姿を、
少年は、遠いとおい少女の姿を、
星空のなかに思い描いた
せまり来る灯火の群れに怯えながら
二人はいつまでも語りつづけた
二人の語りあう物語はいつしか、
天球に広がる星座となった
とある星座の物語は
名もなき少女と少年の物語は
それから千年の神話となった
──いつしか失われた砂漠の神話を
荒れ狂う砂嵐のなかに聞いた
静寂のおとずれた夜の砂漠で
旅人はいにしえの星座を結んだ
【詩】砂漠の神話 悠月 @yuzuki1523
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