エピローグ

 真っ白で、だだっ広い空間の真ん中に、二人で立ち尽くす。

 ゼストは無事に終了し、撤収もほぼ完了した。ここにいるのは、僕と三条さんだけ。

「終わったね」

「うん、なんとか終わった」

 過去にないレベルの参加者数だった事もあり、色々なトラブルもあったし、失敗もした。

 それでも、参加してくれた人は喜んでくれたし、直接励ましてくれる人もたくさんいた。

 入広瀬さんのトークライブも大きな混乱もなく終了する事が出来た。

「わたしね、この終わった後の会場が好きなんだ……。真っ白な、何もない床や壁を見てるとね、次はどんな楽しい事をしようかなって気分になるの」

「さながら、巨大なキャンバスといった感じですかね」

「今ちょっとうまいこと言ったなって思ったでしょ?」

 いたずらっぽい笑顔で僕の肩をつつきながら言う。もちろん思いましたとも。

「それじゃあ、次はどんな事がしたい?」

「ナイショ!」

 即答っぷりからして絶対考えてないな。僕にはわかる。

「まあ、まだこれから今回のゼストの残務あるしね。宿題だって終わってないんだし」

 夏休みはあと一週間ちょっと。来週の火曜日には終わってしまう。宿題は、全く手を着けていないわけではないが、ちょっと頑張らないと終わりそうにない。

 言っておいて暗い表情になってしまった。目の前の人も全く同じ表情だ。

「まさかこの夏、絶望的な気分の一週間が三回も来るとは思わなかったわ……」

「宿題、ちょっとは進めてあるからさ。手伝うよ」

「そうだね、こっちも諦めないでがんばらないとね! 鳥屋野くんが写させてくれるなら間に合いそうだし!」

「全部やらせる気だこの人!」

「よーし、ゼストのお仕事終わらせたら週末からは宿題写しだ!」

「写しなのかよ!」

 そういってエントランスに向かって先に歩き出した。まあ、突っ込んではみたものの、あと僕に出来る事といったらそれくらいだからね。がんばりましょうかね。

「ねえ、鳥屋野くん! そういう事だからさ!」

 先に歩いていた三条さんが突然振り向いた。

 そして、大きな声で、最高の笑顔と共に、こう聞いてきた。

「今度の週末、空いてる?」

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コミックゼスト! 後藤紳 @qina

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