とある地方都市。地元から少し遠い高校へ入学しひっそり生きていた鳥屋野は、ある日同級生の美少女そらに休日の誘いを受ける。舞い上がって待ち合わせ場所へ行ったものの、連れられた先は同人誌即売会の会場。そして見習いスタッフとしてあちこちを手伝うことに。そらはその即売会の主催だったのだ。
優しくも有能なスタッフたちに囲まれ、鳥屋野はオタク知識を学びながらその輪に溶け込んでいくが、参加者が減りつつあるそらの即売会は大手のイベント運営会社に吸収されそうになっていて、鳥屋野の言葉をきっかけに一か八かの勝負に出ることになり……。
会場の設営、列の整理や手荷物預かり、委託販売、会場警備、撤収……運営側から語られる諸々にリアリティが感じられて新鮮だ。スタッフも個性の強い面々が多く(常に変身ベルトを装着しているベルトさんや、スキンヘッドの小児科医で幼児をこよなく愛するベンツ先生、小声なせいでそらしか言葉を聞き取れないネット担当の川口さん、他にも多数)、楽しく読める。(彼らほど優秀なメンバーが揃っていてなおこの窮状かと思わなくもないが、彼らだからかろうじて潰れずに済んでいるということなのかもしれない)
同人誌を売る者、買う者、運営する者、誰が欠けても即売会は成り立たず全員が参加者だ。そのイベントを大切にしたいという作者の愛がひしひしと感じられる。