幸せなときは幸せを願い、不幸なときは不幸を願う、これは人であれば誰しもが抱くものではないのかなぁと思いました。理不尽な仕打ちに打ちのめされる主人公の心の内はいかばかりかと、おそらくその満たされることのない哀しみを推し量ることは出来ても本当の意味では理解できないかもしれない。自分が同じ目に遭わない限りは。そう思うと本当に怖い。もしかしたらぼくの手にあるお守りも本当は幸福を願ったものではなく、不幸を願うものなのかもしれませんから。
短い話の中に、幸福と狂気、そして恐怖が織り込まれています。読みにくいと感じさせない自然な言葉の紡ぎ出しは、確固たる文章能力があるからでしょう。安定感もあって、わたしはこの方の文章が好きです。主人公はいったい、この先どうなっていくのか。そこで止めるなんて!先を読ませてほしい寸止めプレイなのですねと涙目になるしかありません。