とにもかくにもこの主人公はすごくよく書けてる。

電子書籍で読みました。
とにかく主人公のいじり方がうまい。
それはそれはびっくりするくらいうまい。

私の創作における信念の一つに、主人公はともかくコテンパンにひどい目に合わせろ、というのがありまして。

ちょっとくらいこんなことしてもいいだろう→とんでもないことに!
あっ、かわいそう、ちょっと手伝おうかな→とんでもないことに!
もうヤケだ、こうするしかない!→とんでもないことに!

物語はこうでなきゃ面白くならんのです。俺の考えた主人公が超かっこいいなんて展開はなかなか盛り上がらない。こういう観点において、本作はまさしくお手本のような作品でした。

それと女装はじめやBLやGL、男女の双子などなど、この手のジャンルにのめり込むであろうオタクが求めるのをことごとく取り揃えてるのも良かったです。

こんな話なんだし、こういう展開がお約束として期待しちゃうなあ→キタ───O(≧∇≦)O────♪

という、読者を裏切らない展開なのが憎いなあと思いました。コスプレなどこの手のジャンルに通底する文化にどっぷり浸かっている人たちがなにを求めているのか、しっかり捉えているのでしょう。そして、その文化を愛しているのでしょう。

単なるドタバタラブコメならこうは面白くならない。その背後にある主人公を動かす計算された展開、文化に対する確たる理解とリスペクト、これが本作の価値をぐっとあげています。

こうしたジャンルの作品に対して、なんだこんなの俺でも書ける、と悔し紛れをいう方もいるようですが、なかなかこの作品を超えることは難しいと思います。内容はコメディですが、作者の強い意欲に裏打ちされた骨の太い作品だと思います。

上質で巧緻、さらに勢いを感じる作品です。面白いです。そして参考にするところ大です。

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