Web小説が苦手な人にもオススメしたい冒険SF

まずはじめに、この作品を生み出し、最後まで書き切った作者さんに、「こんなにワクワクする面白い物語をありがとうございます」とお伝えしたいです。

実際の横浜駅と私との関係は特に無く、特別な愛着もありませんでした。電車で通ったことがあるな、程度のものです。
ですが、そんな私も知っているあの単語やこの単語が、この物語の中で特別な意味をもって登場する様は、「ここでこれが出てくるのか!」というちょっとした可笑しさがあり、自分をこのSF世界にグイッと引き込んでくれる面白い仕掛けだと思いました。(もちろん、実在のそれらとのフィクションを越えた関係は一切無いのですが)

そういった仕掛けがあり、そしてなにより物語の冒頭で示された「42番出口」という出口に向かって、どう物語は進んでいくのだろうか? この次は何が出てくるだろうか? どこが出てくるだろうか? という好奇心が刺激され、時間が空いたらすぐ読む…を繰り返して一気に最後まで読んでしまいました。

言葉と同様に、物や場所も、私が知っている現実世界のそれがそのまま出てくる……のではなく、この物語で描かれているコレはこういう形をしているのではないか? こういう構造で、こういう景色なのではないか? 光はこう射しているのではないだろうか? というようにあれこれ想像することができ、物語世界が自分の中で無限に広がっていくことも、読んでいてとても楽しかったです。

私にとってのWeb小説のピークは、自身がホームページ上にアップして楽しんでいただけの、ブログも携帯も無かったもう18年近く前のことで、その後に登場した「携帯小説」や「なろう」などには全く興味がありませんでした。
そのため、この作品との出会いは、たまたまTwitterでフォローしていた方のお名前を、たまたまニュースアプリで見かけて驚いた、というところから始まっているのですが、本当に出会えてよかったです。

読んでいる時には前述のように自分の中であれこれ想像していた世界が、(あとがきでは冗談のように書かれていますが)書籍化されて大ヒットして劇場アニメ化されて、私ではない誰かが想像して構築した絵として出てきてくれたとしたら、さらに楽しいだろうなと思わずにはいられません。

物語の進行方向とは真逆になってしまいますが、この「横浜駅SF」が増殖しつづけ広がり、さらなる楽しさを生み出してくれることを願っています。