第4話

「おう、洋介ひさしぶり」

「ひさしぶり。相変わらずだね」

 私には一人だけ悪友が居た。

 親友ではなく悪友だ。

 中学生までは、子分まではいかなくてもパシリに使われていたくらいなので友達というのは違う。

 私は、高校を卒業して私立だが、そこそこ偏差値の高い大学に行かせてもらい奨学金とアルバイトで稼いだお金でなんとか暮らしていけた。

 彼は卒業後、中退しフリーターになった。

 実家がお寺で、裕福だったのと長男なので跡を継ぐ道が残されていた為、彼はその時、遊んで暮らしていた。

 大人になって再会した時には、少し力関係が変わっており、彼も昔のように勢いだけで物事を解決しようとは考えなくなったのだと思う。

「まだ、クラブに行ったりしてるのか? 」

「たまにな。後輩共がうるさいからな」

 ただ、この男は本質的には何も変わっていない。

 スーツを着ていても、袈裟を着てもどうしようもなくクズなのだ。

「お前は仏様なんて信じてないよな」

「ああ、そんなもの信じちゃいねぇ。リンカーンだって信じちゃいないよ俺は」

 下品な笑い方は相変わらずだったが、少しだけ老けたように見える。

 同じ分だけ自分も、年をとってきたのだ。

「結婚したら一度、遊びに来なよ」

 私は、三カ月後結婚する事を彼に告げた。

「おめでとう、なんだよ、俺を呼ばないといけないくらい友達いないのか? 」

「流石に結婚式には、会社の同僚を呼ぶよ。そうじゃなくて、親しい友人としてだよ」

「ふーん、まぁいいや。その時は奥さんを紹介してくれや」

「あぁ、もちろん」

 私は彼に会うためだけに、わざわざこの街に戻っていた。

 他にすることが無かったので、母の生家があった場所に寄ってみた。

 昨年までは、砂利を敷き詰めた駐車場だったが、今は太陽光のパネルが並んでいた。



 

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愛からは遠い街 @namimor

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