第27話
俺はあの後、足を挫いたメアリーに肩を貸して王都へと向かった。
そしてミラと待ち合わせをした王都の南に在る葡萄酒亭という酒場で合流し、そこにミラとメアリーを置いて俺はここまで運ぶ予定だった商品の積んだ荷馬車を山賊達の住処まで向かい取り戻した。取り戻した商品は俺からミラへ、ミラから予定通りの卸先へと無事辿り着く。
色々在ったが、なんとか無事仕事を終えた俺達は葡萄酒亭の宿屋で一泊して次の日には何事も無くカイスの街へと帰ってきていた。
そしてカイスに着くと同時にミラから規定以上の報酬が支払われ、その金を持ってすぐさま雷斧亭の修繕費を払い、全てが終わった帰り道のことだった。
カイスの南門を抜けて俺とメアリーはエレナの別荘までの一本道を二人で横並びに歩いている。
「足は……もう大丈夫なのか?」
「はい、ミラ様に頂いた湿布で完治いたしました」
「そうか……」
横で見る限りぎこちない歩き方をしてないから、彼女が口にする様に完治はしているのだろう。
真っ直ぐに続く帰路を俺達はゆっくりと歩き、エレナが待つであろう家に着く。
ドアを開いて「ただいま」と中に入ると、そこにはいつも通りソファーで本を読む彼女の姿がそこに在る。そんないつも通りの光景を見て、やっと家に帰って来れた安心感の様なモノが俺の胸の内に宿る。だから思わず、安堵の溜息が一つ出たのだろう。
「アナタ達……。一体今まで、何処で何をしてきたのかしら?」
「ああ、それはかなり長い話しになりそうだ……」
そう言いながら俺は彼女が座るソファーとは反対側のソファーに深く腰掛ける。
「それで、何が在ったの?」
「ああ、実はな……」
俺はエレナに今回の護衛仕事の終始を冒険譚の様に話し、彼女はそれを呆れた様子でそれを聞く。昨日までの非日常は去り、こうして俺は平穏な日常を取り戻した。いやここに居る時点で俺の日常は非日常なのだろうが、とにかく今は平和だ。エレナと他愛の無い話をして、雷斧亭で働いて、メアリーが傍に付き添う様に居る。
何も進展しない、何も動かない、他愛の無い毎日。そんな何気ない日常が少しばかり幸せだと感じていた。
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