和美とみんなの変身物語

ワイワイ

虎の巻

和美は、特殊体質である。母親から受け継いだこの能力の名を変身という。  

ある日、山へ和美は向かった。

和美は、木の陰に入ってシャツを脱いだ。肌が露出する。和美は、土に手を着き、目を閉じて、大きく伸びをした。

ざわざわとした音とともに、和美の白い肌に明るい二色の毛が生えた、 そして骨がきしむような音が聞こえてきて全身の形にも変化が生じる。今まで四つんばいであっても、 結局ひざが地面についている状態だったが、そのひざがグッと持ち上がる。よく見ると和美の脚のサイズが大きくなったのに対し、 長さに大きな変化が無かった。いや、変化が無いのは足首の部分までで、足の部分は見る見る変化が訪れる。指は太く短くなり、 先端から、たくましく、また尖ったつめが伸び始める。そしてつま先からかかとまでがどんどん長くなり、 そのつま先だけで身体を支えるようになったため、ひざが地面につく必要が無くなったのだ。

手足の裏に、柔らかい肉球が生じていた。胸から腹にかけては、白いふさふさした毛並みが覆っている。ここまで和美の身体はそれは手においても同様だった。 白い毛で覆われた指は短くなり、手のひらには柔らかで黒い、地面を捉える肉球が生じる。それはもう手ではなく、 前足と呼ぶにふさわしい物になっていた。その間、左右の後足の付け根から背中と同じ縞模様の長い尾をさっと振った。

喉を鳴らした。既に顔の周りにまで毛は生じていたが、徐々にそれが顔全体に広がっていく。 和美が目を閉じると、顔の形状も変化が生じる。 まず鼻が少し上に持ち上がって、上あごを引っ張るように前に突き出し始める。そして鼻は鮮やかな桃色へ変色し、 鼻の下から上唇にかけて一筋の黒い筋が生まれ、鼻の下からは白く長いヒゲが何本も生じた。 そのヒゲと同じような毛が目の上からも眉毛の変わりに何本か生えていた。耳も大きく三角形に尖り、徐々に頭頂部に向かって移動していく。 耳が完全に頭の上に来た頃には耳の内側にも柔らかな毛が生じていた。

 そしてゆっくりと目を見開くと、元々焦げ茶の瞳の色は、 今は黄金のように輝き、光を放っていた。

虎だ。誰がこれを見て可憐な少女だと思うであろうか。

そして、和美は1日山奥で遊んだ。

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