研究というものの本質が描かれている
- ★★★ Excellent!!!
大学教授の給料の安さが,先日話題になっていました.
研究者の求人は少なく,そのほとんどが3~5年限りの任期付きです.研究者は少ない給料で,一生職を失う不安と戦い続けています.
それでも,研究者という人種は,研究せずにはいられない.いったい何が彼らを研究に駆り立てるのでしょうか.
本作において,主人公は,研究費がない,論文提出期限までの時間もない,もちろんその後の職も決まっていない,そんなどうしようもない状況から出発します.
しかし,いったん研究を始めてからというもの,主人公はそんな絶望的な状況も忘れ,指導教官に博士号のことも考えなさいと諌められるくらい,研究そのものにのめり込んでいきます.
最初は研究課題の面白さから.
そして徐々に姿を表す謎に惹かれて.
それはたいていモニターに映る文字列だとか,微細な構造のゆらぎだとか,絵面としてはそんな劇的なものではありません.でもその背後に巨大な何かが見える.それが垣間見えた瞬間の,背すじがゾクッとする興奮.ひとたびそれを味わってしまえば,もう次の興奮を求めて研究にのめり込む以外にないのです.
クライマックスは博士論文の公聴会.巨大な敵を倒して世界を救うわけでもなければ,大恋愛が結実するわけでもない,絵面としてはこれまた地味なものですが,こんなにエキサイティングでわくわくするクライマックスも珍しいでしょう.
ぜひ,主人公と一緒に研究の面白さを味わって欲しいと思います.