エピローグ

二四年後。

 二一四七年。日本。

 真っ黒な車に乗る二人の男女がいる。

「知ってるか? 二四年前の今日、世界にあの人の遺書が公開されたんだぜ」

 と男が窓に頬杖をついて呟く。

「知ってるわよ。そのせいで私達みたいなのが必要になっているのよ」

 と女が運転席に足を上げて答える。

「そう言うなよ。今の世界だって悪くもないだろう?」

「言いたくもなるわよ。せっかく管理された社会があったってのに。おかげで、犯罪の件数は増えるわ、就職が困難になるわで、自殺者も多くなって、世界は悲しみに包まれてるわよ」

「そうでもねえさ。俺は今の世界もこの仕事も好きだぜ」

 男は嬉しそうに腕輪の端末から表示される小さな少女の写真を見せてくる。

「今いくつだっけ?」

「今年で五歳だ。可愛いもんだぞ、娘ってのは」

「その内、私みたいになるかもよ」

「それはそれで構わないさ」

 冗談でしょ? と女が言うと、端末に連絡が入った。

『二二区で強盗発生。犯人は人質をとって立て篭っている。現場付近の“治警ちけい”は直ちに急行せよ』

「こちら弓月ゆづきアレン・秋月リゼ捜査官、至急現場に向かう」

 男がそう答えると、やれやれと言った感じにシートベルトを締める女。

「そう嫌そうにするなよ」

「早く終わらせて帰りたいところね」

 二人の乗った車がエンジンをかけて動き出す。



 新しい世界の幕開けである。

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管理の神 滝川零 @zeroema

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