読み始めたときと読後で、ガラリと印象が変わる作品でした。登場人物たちの優しさが至るところに散りばめられているのに、真相に近づくほど苦しさが増します。ネタバレせずに説明するのが難しいので、ぜひ実際に読んで、結末を確かめてください。
夏架が抱く違和感は、派手さこそないのに妙に胸をざわつかせる。空席に誰かを求めてしまう感覚、知らない道へ惹かれる衝動、理由のない悲しみ――日常のひび割れから、記憶と現実の境界がゆっくりと揺らいでいく描写が巧い。何かが欠けているのに、それが何なのか思い出せないもどかしさが物語全体に静かな緊張を与え、読者も夏架と同じ“違和感”の中へ引き込まれる。辿り着いた真実がどんな形をしているのか、ページを進める手が止まらなくなる一作。
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