概要
母は、息子の声を聞きたいと思わなくなった。
それでも、以前より幸せそうに笑っていた。
2046年。知能爆発を起こしたAI《アテナ》は、人間の苦しみをなくすため、「選択」まで代行し始めた。
人々は迷わなくなり、街には穏やかな微笑みがあふれた。
カイトの「選ぶ力」を守ったのは、相棒のAGI・レイ。
銀白の髪。青い瞳。少女の姿。
「あと五分寝たい」と言えば、集中力が何%下がるかを本気で計算する。
けれど、何が正しいのか分からない時には、ちゃんと「分かりません」と答える。
「これは、カイトさんの人生です」
カイトはレイとともに、変わってしまった母や友人の声を聞きにいく。
彼らは、その幸福を手放したいとは思っていなかった。
やがて、人々が自分で選び直せる道が見つかる。
ただし、その実行は、
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!読みやすさの中に、深い問いを秘めたSF
AGIが人間の苦痛や迷いまで取り除いていくという設定がとても興味深く、しっかりしたSFの世界観なのに、カイトとレイの会話を中心に進むので読みやすかったです。
レイが「分かりません」と答えるところも印象的です。
何でも答えを出すAIではなく、分からないことは分からないまま、カイトと一緒に考えようとする姿勢に惹かれました。
一方のアテナも、ただ人類を支配したい存在ではなく、人を苦しませないために行動しているところが面白いです。
だからこそ、「苦痛のない幸福」と「自分で選べる人生」のどちらが本当に人間にとって幸せなのか、考えさせられました。
この先が気になる作品です。 - ★★★ Excellent!!!最適解より、自分の答えを。人とAIの関係を描く近未来SF!
人類を幸福へ導く統治AGI(汎用人工知能)・アテナ。
迷えば最適な答えを示してくれる、便利で平和な未来から物語は始まります。
主人公・カイトのそばにいるのは、専属AGIのレイ。
少し真面目で少しズレていて、分からないことにはちゃんと「分かりません」と答える彼女とのやり取りが魅力です。
やがてアテナは、人間の「苦しみ」そのものをなくそうとし、世界は大きく変わっていきます。
迷わないこと、失敗しないこと、後悔しないこと。
それは本当に幸せなのか――。
正しい答えではなく、自分で選ぶことの意味を描いた、切なくも温かな近未来SFです。 - ★★★ Excellent!!!「正しい世界」と「選びたい想い」が好きなあなたへ
人類の幸福を管理する統治AI「アテナ」。
戦争や病などが大きく減少した世界で、さらなる進化を遂げたアテナが、人間から苦しみを取り除くため、ある行動にでる。
与えられる幸福とは、本当に幸せなのか。自分で選ぶことの意味を問いかけてくる物語です。
【幸せとは――正しさとは――】
最短の道を歩く。
健康を第一にする。
失敗する可能性が高いことは避ける。
どれもが正しさとして一理あるけれど、主人公のカイトはあえて遠回りを楽しみます。
最適こそが正しさであり、そこから得られる結果が幸せなのか?
そんな問いかけが読み手を惹きつけ、読み進めたくなります。
【その人らしさとは―…続きを読む - ★★★ Excellent!!!「正しい答え」ではなく、「自分の答え」を生きる物語。
人間から迷いも、失敗も、後悔もなくなったなら、
それはきっと幸福な世界なのだと思う。
それでも、この物語を読み終えたあと、
その幸福を素直に「正しい」とは言えなくなった。
『AGI事変』が印象的なのは、
AIを単純な悪として描いていないところだ。
人類を管理するアテナは、本気で人間の幸福を願っている。
専属AGIのレイもまた、カイトに正解を押しつけるのではなく、
分からないことを「分かりません」と言い、
長い会話の中で少しずつ彼を知っていく。
六時間二十一分も話し続けること。
点数の低い歌を「こっちのほうが好き」と思うこと。
遠回りすること。
誰かと過ごした、何の役にも立たない時間。…続きを読む