概要
二月一日から、死んだら倍になる。それまで、生きといてもらわなあかん。
昭和三十八年、大阪。雲井卓次は示談屋や。交通事故が起きたら現場へ行って、調書の下書きを書き、遺族と金の話をする。嘘は書かん。書かんことを選ぶだけや。それで十年、食うてきた。その秋、当たり屋の六車が轢かれて死んだ。十年、車に当たって金を取ってきた職人が、当たり方を間違えて死ぬ。しかも妹は泣かず、示談を急いだ。調べるうちに、同じ形の請求が四十七件あることが分かる。書類は、どれも正しい。正しいさかい、誰も何も言わん。自賠責の死亡保険金は五十万円。翌年二月一日、政令が変わって百万円になる。病気で死んだら零。道の上で死んだら五十万。二月まで待って道の上で死んだら百万。誰かが、人の残りの月数を測って、順番を決めとる。昭和の保険制度の隙間を舞台にした、ダークヒーロー長編。
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