概要
誰も、救うつもりはなかった。ただ、儲けたかっただけだ。
宗谷そうすけ、三十二歳。強欲で、浅い。
祖父が遺したのは、鳥取の潰れかけの私立高校だった。相続してすぐ、彼は最大の誤算に気づく。学校法人は、配当ができない。どれだけ儲けても、一円も、自分の懐には入らない。
ならば、と彼は考える。学校の"値段"を吊り上げ、名前を売り、講演で、テレビで、いつか政界で稼げばいい。そのための最良の広告が——甲子園だ。
こうして彼は、金儲けのためだけに、甲子園を目指しはじめる。名将を値切って雇い、定員割れの空席にうまい中学生を座らせ、電卓を叩き、頭を下げる。生徒の名前は、一人も、覚えない。覚える必要が、彼の帳簿には、ないからである。
彼は最後まで、なぜ学校が良くなっていくのかを、理解しない。
——そして、朝の五時のグラウンドの隅で、彼がずっと数えそこねている部が、一つ、ある。
祖父が遺したのは、鳥取の潰れかけの私立高校だった。相続してすぐ、彼は最大の誤算に気づく。学校法人は、配当ができない。どれだけ儲けても、一円も、自分の懐には入らない。
ならば、と彼は考える。学校の"値段"を吊り上げ、名前を売り、講演で、テレビで、いつか政界で稼げばいい。そのための最良の広告が——甲子園だ。
こうして彼は、金儲けのためだけに、甲子園を目指しはじめる。名将を値切って雇い、定員割れの空席にうまい中学生を座らせ、電卓を叩き、頭を下げる。生徒の名前は、一人も、覚えない。覚える必要が、彼の帳簿には、ないからである。
彼は最後まで、なぜ学校が良くなっていくのかを、理解しない。
——そして、朝の五時のグラウンドの隅で、彼がずっと数えそこねている部が、一つ、ある。
おすすめレビュー
書かれたレビューはまだありません
この小説の魅力を、あなたの言葉で伝えてみませんか?