概要
クーラーの音、蝉の声。そして手首に残された白いハートマーク。
夏の正午。
ゴォォと鳴くクーラーの音と、遠くで鳴く蝉の声。
大学一年生の西木日菜(にしき ひな)は、部屋で毛布にくるまりながらリストの生涯を綴った小説を読んでいた。
静かな読書時間を邪魔するように響く、プーンという不快な音。
現れたのは人類の敵――蚊だ。
今度こそパチンと叩き伏せようとした日菜だったが、手首に止まったその蚊に脚が4本しかないことに気づく。
「……リストとショパンに免じて、今日だけは勘弁してあげる」
小説の余韻に免じて血を分け与えることにした日菜は、ゆっくりとお腹をラズベリー色に染めていく蚊の姿を、じっと観察し始めて――。
夏の生活音の中で繰り広げられる、小さな命とのささやかな「一期一会」を描いた日常ショートストーリー。
ゴォォと鳴くクーラーの音と、遠くで鳴く蝉の声。
大学一年生の西木日菜(にしき ひな)は、部屋で毛布にくるまりながらリストの生涯を綴った小説を読んでいた。
静かな読書時間を邪魔するように響く、プーンという不快な音。
現れたのは人類の敵――蚊だ。
今度こそパチンと叩き伏せようとした日菜だったが、手首に止まったその蚊に脚が4本しかないことに気づく。
「……リストとショパンに免じて、今日だけは勘弁してあげる」
小説の余韻に免じて血を分け与えることにした日菜は、ゆっくりとお腹をラズベリー色に染めていく蚊の姿を、じっと観察し始めて――。
夏の生活音の中で繰り広げられる、小さな命とのささやかな「一期一会」を描いた日常ショートストーリー。