★
0
概要
「お前たちの救いは、わしらの死だ」それでも、川は西へ。
現在の大和川は、昔から今の場所を流れていた川ではない。宝永元年、人の手で大阪平野に通された、長さ十四キロあまり、幅百八十メートルの人工の川である。
物語は、その川に水が入る朝から始まる。宝永元年十月十三日。古い堤に鍬が入り、細い水が糸のように走り、やがて濁流になる。堤の上に立つ大坂代官・万年長十郎は思い出していた。この川が、まだ誰にも通らない願いだった頃のことを。
江戸前期、河内平野の大和川は北へ分かれて流れ、大雨のたびに田を沈め、米を腐らせ、子を奪った。今米村の中甚兵衛らは「川を西へ替えてくれ」と半世紀近く訴え続ける。だがその願いは、別の村を川底に沈める願いでもあった。新しい川筋には家があり、畑があり、墓がある。「お前たちの救いは、わしらの死だ」。検分は繰り返され、幕府の答えは変わらな
物語は、その川に水が入る朝から始まる。宝永元年十月十三日。古い堤に鍬が入り、細い水が糸のように走り、やがて濁流になる。堤の上に立つ大坂代官・万年長十郎は思い出していた。この川が、まだ誰にも通らない願いだった頃のことを。
江戸前期、河内平野の大和川は北へ分かれて流れ、大雨のたびに田を沈め、米を腐らせ、子を奪った。今米村の中甚兵衛らは「川を西へ替えてくれ」と半世紀近く訴え続ける。だがその願いは、別の村を川底に沈める願いでもあった。新しい川筋には家があり、畑があり、墓がある。「お前たちの救いは、わしらの死だ」。検分は繰り返され、幕府の答えは変わらな
おすすめレビュー
書かれたレビューはまだありません
この小説の魅力を、あなたの言葉で伝えてみませんか?