概要
全ては一つの足跡を残し水煙の如く消えてゆく
杉村と宮本、二人の医師が顔を合わせて話し合っていた。ある患者が大学で体験した、実に奇怪な出来事を。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!精神を病む者の一番怖いところが表現されている
身体の疾患も厄介ですが、精神疾患も相当しんどいものです。
こちらはジャンルホラーですが、精神病患者の逃げ場のない気持ちが重厚感ある文章で綴られております。
きっかけはあのアトリエかもしれないですが、本人はいたって真面目に考えているのに周りが不可解な雰囲気を出す。でもその真面目さは元の素質に精神疾患が加わったもので、医療者からはせん妄や副作用としてしか思われない。
そんなリアルな怖さが伝わってきました。
事故も事件も霊の存在も偶然なのか必然なのかわからない、でも手記を書いた本人の言うことは間違いなく本物。
どこをどう怖いか定義付けずに、恐ろしさだけ残る文章。すっかり引き込まれました。
【…続きを読む - ★★★ Excellent!!!これは怖いよお
ホラーはレビューを書くことが難しい。怖さがどこにあるかを紹介してしまうと怖くなくなってしまうし、仕掛けを褒めるのも読者の体験を削ぐ。だから内容には触れず紹介を試みる。本作の作者はH.P.ラヴクラフト好きを公言されているので、その線に沿った紹介なら許されるだろう。本作はいわゆるクトゥルー神話ではない。だが、ラヴクラフトのホラーのプロット様式を忠実に再現している。すなわち知的な主人公が禁忌に触れて日常を侵食され、最後には破滅するというものだ。これは誰でもできる模倣ではない。まず知的な主人公を描こうとすると、その思考と文体が一致しないと途端に嘘くさくなる。本作はその点は三重丸だ。文体のやや古風で…続きを読む