概要
名前を知らなければ、傷つかない。そう信じていた。
ホテルの名前は覚えていない。
名前を訊こうとしたら、女が遮った。「言わなくていい」
鎖骨に古い傷のある女と、一夜を過ごした。
枕の下に、片方だけのピアスが落ちていた。
捨てればいいのに、内ポケットにしまった。
匿名のまま消えるはずだった。消えてくれれば、よかった。
けれど指は、内ポケットの輪の硬さを覚えていた。
——名前を知った代わりに、何を失ったのか。
中年男の、終わらない一夜と、その後の沈黙の物語。
名前を訊こうとしたら、女が遮った。「言わなくていい」
鎖骨に古い傷のある女と、一夜を過ごした。
枕の下に、片方だけのピアスが落ちていた。
捨てればいいのに、内ポケットにしまった。
匿名のまま消えるはずだった。消えてくれれば、よかった。
けれど指は、内ポケットの輪の硬さを覚えていた。
——名前を知った代わりに、何を失ったのか。
中年男の、終わらない一夜と、その後の沈黙の物語。
読んでくれてありがとう。物語が届いて嬉しいです。これからも紡ぎ続けます。応援、ありがとう
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!心を静かに揺らす名文
女を通じた物語は、派手な進行はなく、出来事として綴られていきます。
ホテル、口紅、ピアス、ワインーー
都会的な空気が漂う中、そのような言葉はまるで静物画を眺めるように置かれてある。
こねくりまわすところがない文体で描かれる女を通じた出来事は、静かながら読者の関心を惹きつける不思議な力があります。
よく見せようとしない、無駄に盛り込まない、ありのままに描くこと。
もしそれが文学性の一部を意味するのなら、この作品はまさにそれを地でいきながら、不思議な余韻を読後に残してくれます。
愛を描く、恋を描くといったくくりではとてもおさまならい深みは、何度も読み返すことで、少しずつ読者なりの解釈…続きを読む