女を通じた物語は、派手な進行はなく、出来事として綴られていきます。
ホテル、口紅、ピアス、ワインーー
都会的な空気が漂う中、そのような言葉はまるで静物画を眺めるように置かれてある。
こねくりまわすところがない文体で描かれる女を通じた出来事は、静かながら読者の関心を惹きつける不思議な力があります。
よく見せようとしない、無駄に盛り込まない、ありのままに描くこと。
もしそれが文学性の一部を意味するのなら、この作品はまさにそれを地でいきながら、不思議な余韻を読後に残してくれます。
愛を描く、恋を描くといったくくりではとてもおさまならい深みは、何度も読み返すことで、少しずつ読者なりの解釈が可能となっていく。
少なくとも読みながら、そのような印象を受けました。
「ない」という言葉をよく見かけるのも、喪失感と虚無性が根底にあるからではないかと推察します。
心を静かに揺らす作品です。