このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(354文字)
祖母の法要の日、異界へと迷い込んだ千春と、彼女を送る届けようとする「送り犬」の物語です。「転べば食う」というルールと恐怖の裏で、暗闇から千春を守り、静かに導く送り犬の理知的な佇まいが実に男前。送り犬伝承を巡る二人のやり取りや、千春が名前を教えるシーンなど、少しずつ分かり合えているように見えても送り犬が異界の存在であることに切なさを覚えます。もしも転んでしまった時の回避方法に微笑みつつ、真実が明かされて愕然とする前フリから、「送り犬」の粋な対応に痺れました。千の春が巡るのを数える送り犬に想いを馳せたくなる、よい物語です。
切り口は民俗学のようなホラーな雰囲気ですが、読了後には怪奇と少女が出会った切なさが胸を締め付けます。逸話を持つ「送り犬」。けれど彼は条件付きで人を守り、家まで送ってくれる。山に迷い込んだ少女、千春との出会いは彼にとってどんな心情だったのか……。「送り犬」の台詞の端々から感じ取れる、物語の最後の心情。こちらの想像力と共感性を刺激してくれる、とても素敵で切ない物語です。ぜひ、読んで下さい。きっと、美しくも切ない余韻にひたること間違いなしです。
名前がどれほど大事かを教えてくれる物語。幾年も待ってくれるモノがいるのではないか、名前を呼んでくれるのではないか、と。きっと、彼はその名前を忘れない。とても切なく美しい物語でした。
『遠野物語』や『山怪』を思わせる、送り犬と呼ばれるものと人の少女の物語です。実際に昔から山間の集落に住む人の中では、神隠しを天狗に拐かされたとか、狸に化かされたのだとか、そういう話が語られます。この話は人ならざるもの、神なのか、妖なのか"送り犬"と境を越えてしまった少女、千春とのそんなひとつの怪異譚です。
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