概要
骨を喉に詰まらせた冥界の番犬(ケルベロス)、痛風で飛べなくなった空の王者(ワイバーン)、過労でうつ病になったユニコーンなど……。
この辺境の診療所に担ぎ込まれるのは、ひと癖もふた癖もある幻獣ばかり。
魔法がすべてを解決する世界で、あえて「メス」を握る女医がいた。
王都の医局を追放された偏屈な天才幻獣医・ヒコナが流れ着いたのは、最果ての霊峰エコーロア。古びた看板に『ヒコナ診療所』とだけ記された小さな建物だ。
そこは、渡り鳥のようにワイバーンの群れが空を横切り、巨人の足音が地響きを鳴らし、不死鳥すら息づく神話の世界。ハーフリングの少年助手・ステトは、そんな途方もない大自然の中で今日も薬草をすり潰している。
どんな幻獣を前にしても、ヒコナ
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- ★★★ Excellent!!!生があるからこその痛み
痛み、苦しみ、そして病気。お釈迦様も言っていたように、生老病死による苦は人生に付きまとう。
それは、我々が【幻想】として見ている【異なる現実】を生きる生命たちも同じである。
この物語に出てくる外科的な外傷は、現象的なものとして扱われている。
何故痛くなるのか。何故苦しむのか。それらを現実的な痛みを感じるまでに掘り下げ、我々の前に示してくれる。
痛みに対して詳細な分析を行うことが、幻想世界に現実味を与え、主人公だけでなくケルベロスやスライムのような幻想生物に対しても生の痛みと感情を感じさせる。
だからこそ、医療を通して生きることへ真摯に向き合うヒコナの姿勢が我々読者に鋭く刺さる。
幻想世界…続きを読む - ★★★ Excellent!!!生命を「消費」しない異世界ファンタジー
異世界ファンタジーでは、命はしばしば「経験値」や「素材」として消費されます。
けれど、この作品は違いました。
この世界で「幻獣」は倒す存在ではなく、生きる存在です。
「モンスター」として消費されがちな異世界ファンタジーの世界で、「幻獣」というやわらかな名前を与えられた彼らは、ただ倒される存在ではなく、守られるべき命として描かれます。
傷つき、病み、疲れた「幻獣」たちを確かな「医療」で救っていく主人公と助手の姿に胸が熱くなります。
時に治療の過程で危険な目に遭いながらも、主人公たちは自らの危険より、目の前の生命を救うことを優先します。
「魔法」という安易な手段ではなく、「医療」とい…続きを読む - ★★★ Excellent!!!「医療」を別側面から解釈したほっこり診療録。
このファンタジー世界は「魔法」と呼ばれる便利なものがあるので、「医療」というものが古きものとして扱われております。魔法でちょちょいのちょい♪で治療してきたお偉い方から見て、ヒコナ先生が行う「医療」というものは非常に泥臭く、時間のかかる無駄の多い作業と思われるでしょう。
ですが、魔法で心は直せません。傷は治っても痛みを伴います。
ヒコナ先生が行う医療は相手が人間ではない(ほぼ幻獣や異種族)が相手に寄り添い、最善の方法を導き出します。
現代医学にも通じることで、この寄り添いこそが最大の魔法と私は思っております。
ヒコナ先生の寄り添いとできる最大限の医療行為が沢山のひとの笑顔と感謝を表出しておりま…続きを読む