楽しめました。
ギャグの合う合わないは、受け手の境遇や教養にもとづく好き嫌いによるところが大きいと思います。
なので、結果として私に深く刺さらなかったこと自体は、別段本作の評価に影響しません。
ギャグの本来的な意味は、風刺だったり共感による満足だったりする、いわば指向性をもった笑いだと私は考えます。
しかし、本作のギャグにはそうした指向性はなく、インフルエンサーがスマホ片手に散歩ライブしながらボケていくような、場の流れを楽しむコンテンツとしての色が強い。またエ口サイ卜は魔界から来たはずなのに、日本人のコア層が好むような話題をしらじらと語ってみせる。
そこに、異文化圏の人物が日本文化の特異性に切り込んでいくといった指向性はなく、笑いの空気に乗れなかったという印象です。
ギャグの風味も、奇抜さを取るあまりに芯を食った設定やパワーフレーズがなく、物足りませんでした。
某マグロナルドではたらく魔王の作品とか、自衛隊にゲッツされたオタクが異世界人をオタ文化で懐柔する作品とか、そういったストーリー味があっても良かったのでは? と、シロウト考えですが思ってしまいました。
本作は、強烈なタイトルに釣られ、中身の面白さに圧倒される、そんな一作となっております。
内容としては、冒頭から数話を使っても、ファンタジー的な展開は起きず、魔王と側近の会話劇が繰り返されます。
そう、これは、既存の魔王もののテンプレートを良い意味で裏切る斬新なストーリー構造を持ち、そのボキャブラリーの多さを堪能する作品なのです。
勘違い、下ネタ、メタ、なんでもござれの闇鍋感。
作者様が「自身の好みに全振りした」とおっしゃっているとおり、作品のタグにまで作品の毒気が溢れており、コメディに隙がありません。
ライト中のライトな展開と、ギャグの応酬と地の文のテンポの良さも相まって、飽きることなく一気読みできる可読性があり、まさにWEB小説を体現した構成です。
群雄割拠の中で、本作が抜き出ているのは、前述のとおり、作品を構成する各要素の割合をすべてコメディに極振りしているからなのかもしれません。
魔王が人間界をのびのびと謳歌する姿を、側近との絶妙に噛み合わないズレと抜群のテンポで描き出す、タイトルの一発ネタ感を遥かに超越した爆笑必至の勘違い系コメディ。
とにかく、コメディ・言葉遊びが大好きな読者様は、是非一度、お読みいただければと思います。
【レビューコンテスト応募】
以前読ませていただいた時は、勢いのある言葉遊びとエ口サイ卜とsiri滅裂の掛け合いの面白さに惹かれましたが、さらに読み進めていくと、この作品の魅力はそれだけではないのだと感じました。
魔王が人間界でやりたいことを次々に実行していく自由さは相変わらず楽しいのですが、その一方で、魔界ランキングや魔界十六神将、四天王といった設定が少しずつ広がっていき、ギャグの裏でちゃんと物語が動いているところがとても面白いです。
クロスやくのいちが加わってからは、キャラクター同士の関係性もさらに賑やかになり、エ口サイ卜の無自覚な人たらし感、siriの容赦ないツッコミ、クロスの読者目線に近い反応、くのいちの幼馴染らしい空気感がそれぞれ楽しく、会話を読んでいるだけで笑ってしまいます。
特に、「10分で終わる話を6時間にする」ような脱線だらけの掛け合いなのに、不思議と読み心地がよく、むしろその脱線こそが癖になります。
前半に散りばめられたものが、これからどう回収されていくのかも楽しみです。ギャグの勢いと、物語としての先が気になる面白さの両方を味わえる作品だと思います。
引き続き、楽しみに読ませていただきます!