概要
「三十日だけ、俺になれ」
金の瞳を隠したシャムスは王宮へ入り、銀の瞳のカマルは襤褸を纏い街へ出る。
シャムスの武器になるのは、人の心を動かし、寓話と機転で宮廷を揺らす「語り」の力。
一方のカマルは裏路地を駆け、兄の死の真相を追う。
夜ごと密かに交わされる、沈香の香りと泥の匂いの報告会。
互いの見たものを物語に変えて語り合ううち、二人は後戻りのできない共犯関係へと踏み込んでいく。
そして月が満ちる頃、二人は知る。
この国の物語そのものが、すでに書き換えられていたことを。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!物語が耳の奥で響くアラビアン・ナイト・ファンタジー
盲目の語部シャムスと一国の王子カマル様が入れ替わり、二人で国を変えていくバディもの。
国を救う王道ファンタジーでありながら、アラビアン情緒たっぷりな世界観や語部シャムスの聞き惚れる語り口、息もつかせぬ暗躍と策謀の緊張感で、この作品にしかない魅力がぎゅっとたっぷり詰まったファンタジーでした。
特に語部の語りのシーンは、物語の中のさらに語りという二重構造のような奥行きを生み出して、アラビアン・ファンタジーをより一層匂い立つエキゾチックな不思議な物語の世界へ招かれてしまいます。それでいて、より一層物語の世界をくっきりと浮かび上がらせて理解できるのが素晴らしく不思議で面白く感じました。
主役二人シ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!陰謀を「語り」で崩す!知能戦でありながら美しい詩を読み解くような物語
こちらの作品は、王子と貧しい語りべの少年の「入れ替わり」。
入れ替わり展開は、マーク・トウェインの「王子と乞食」以来、王道でもある。王道とはつまり、"間違いなく面白い"の代名詞。そこへこの作品ならではの「匂い立つような空気感」と「何重にも意味を持つ美しい言葉」の力が合わさり、"メッチャ面白い!"になっています。
巧妙に仕組まれた陰謀を、あくまで「物語を語り、崩す」展開なのですが、「どう語って崩すのか?」が見どころです。
主人公は、王子カマルと語りべのシャムス。ブロマンスではあるものの、どこまでも爽やかで魂同士の結びつきを感じるような関係なので、どんな人にも共感できると思います。
この2人…続きを読む - ★★★ Excellent!!!入れ替わることの緊張感と語りの魅力
まずあらすじを拝見した時、その設定の妙に深く感心しました。
装い、入れ替わるという緊張感のある設定は、間違いなく物語の面白みを底上げするもの。
そして語りの力というのは、高尚な落語家さんやアラビアンナイトを彷彿すると同時に難しいものでもあるだけに、そのチャレンジ精神にとても惹かれました。
実際に読み進めてみると、あらすじの想像を超えてくる適切な描写や説明で、すんなりと物語の世界に入っていくことができました。
夜や月といったものが、入れ替わることの緊張感をさらに強調するという卓越した工夫も鮮やか。
まだ物語は途中ですが、先の展開がとても楽しみです。