概要
怒鳴られたくないので、とりあえず頑張っています。
後年、マルクの軍史家たちは、クラウス・フォン・ライフェンベルクを「沈黙の天才参謀」と記した。
諸邦の利害を束ね、敵国の思惑を見抜き、ただ一言で戦役の方向を定めた男。と。
だが、その大半は誤解である。
確かにクラウスは名門ライフェンベルク家の嫡孫にして、陸軍高等軍学院主席、若くして統帥府(参謀本部)に配属されたエリートだった。
とはいえ本人に言わせれば、ただ試験の点が良かっただけで、戦場を切る直観も決断力も野心もない。
あるのは、人の話を最後まで聞く忍耐と、怒鳴られたくないという切実な願いだけだった。
会議で意見を求められれば、なるべく穏当なことを言う。
揉めそうな議題は、欄を分けて別の紙にする。
怒られそうな言葉は、怒られない言葉に替える。
それだけのことを繰り返していたはずなのに、
諸邦の利害を束ね、敵国の思惑を見抜き、ただ一言で戦役の方向を定めた男。と。
だが、その大半は誤解である。
確かにクラウスは名門ライフェンベルク家の嫡孫にして、陸軍高等軍学院主席、若くして統帥府(参謀本部)に配属されたエリートだった。
とはいえ本人に言わせれば、ただ試験の点が良かっただけで、戦場を切る直観も決断力も野心もない。
あるのは、人の話を最後まで聞く忍耐と、怒鳴られたくないという切実な願いだけだった。
会議で意見を求められれば、なるべく穏当なことを言う。
揉めそうな議題は、欄を分けて別の紙にする。
怒られそうな言葉は、怒られない言葉に替える。
それだけのことを繰り返していたはずなのに、
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!文官が齎した些細な機転がやがて連邦の戦争形態を少しずつ変革していく
29話時点では主人公クラウス大尉がいわゆる軍師無双をする訳では全くない。
19世紀レベルの近代文明の中、彼がただただ現場の軍人達に怒鳴られたくない一心で捻り出していく提案が、やがて彼の所属する連邦という古き体制へと少しずつ、確実に変革をもたらしていく物語……なのかなと現段階では感じる。
最前線に立つ将兵ではない士官達の政治的闘争の見せ方が良い意味でドライであり、戦争とはたった一枚の紙で多くの兵士を死に至らしめ、逆に生かすのだという皮肉と現実が緻密に、濃厚に表現されている良作。
とにかく細部に至るまで描かれるリアリティと情景描写、主人公や相棒の少佐、敵国の少佐らの心象描写が丁寧で小説世界に…続きを読む - ★★★ Excellent!!!「何もしていないのに名参謀になっていく男」の誕生譚
戦争や政治の会議劇を軸にしながら、主人公の“誤解されて評価されていく構造”を丁寧に描いた作品です。
クラウスの内面は極めて慎重で平凡寄りなのに、周囲が勝手に意味を読み取り、天才参謀として形作っていく過程が非常に面白いです。
軍事国家としての連邦の仕組みや、鉄道・補給・地図といった現実的な要素の積み重ねが世界観に説得力を与えています。
会議の緊張感と、本人の内心の温度差が大きく、そのギャップが独特のユーモアとリアリティを生んでいます。
「誤解が本人より先に出世する」という構造が今後どう広がるのか、非常に先が気になる導入でした。