【俺とアイツのいにしえの約束】元夫婦、今世は男同士。でこぼこ退魔祓い師はバディを組む! 《序章》 (1分で読める創作小説2025版)

天雪桃那花(あまゆきもなか)

序章 エリート退魔祓い師と1000年愛

 ――風がカワル。


 ピリッと肌を突き刺す、強く穢れなき清浄すぎる除霊力が満ち満ちて、結界が難なく有能に張られたことを確信させた。紛れもない、張り巡らされた隙無き網模様。


 ――空気がスム。


 淀んだ空間の邪で怪しい気配が、其処に棲む者を此方側の世界に浮き上がらせた。


 ――彼岸花がユレル。


 自分と年端の変わらないぐらいの少年が怪魔に囚われ、生気を吸われ続けていた。


 ――赤い瞳がアク。


 怪魔は女の姿でにたりと笑いこちらをはっきり禍々しい妖力を込めた視線で捉えた。


 ――怪魔の術がカラメトル。


 自分の内に力が漲るのが分かる。もっと滾らせ熱く放て、と頭のなかで昔の自分と共鳴し、強い意志の声がする。


 ――少年を、タスケル、カナラズヤ。


 退魔祓い師としての使命感、仕事を完遂したい思い。

 ただ何よりも純粋に、……人を助けたい。魂を救いたい。怪魔ですらその憎しみや怨念や取りこぼした無念や悲しみも救ってやりたいとすら思い、願う。

 それが己が信念。

 力を持って生まれた自分に課せられた最低限の義務。


 ――死してなお彷徨う魂は、カナワズナゲクバケシモノ。


 お前は人だった?

 人ならざる怪魔なるモノ。

 さあ、手放せ。

 成就せん思いも憎しみも、地縛の呪縛の未練も、さあ、さあ、さあ。


 ――解き放て、我が、チカラヲカシテヤル。


 怪魔は抵抗する。

 が、俺の前では無力だ。

 俺がいつからこの力を行使していると思うよ?


 およそ1000年前から、我は退魔の力で緞帳の暗躍の闇と数多の怪魔を斬り裂き浄化して、天にあの世に、輪廻のことわりに返してやっているのだ。


 ――さあ、還れ、モドレ、ジュンカンノナミヘト。


 俺の退魔の光に斬られた女の怪魔は抵抗を止め大人しくなる。

 やがて魂だけとなり余計な喜怒哀楽かんじょうは捨て去り、天に昇っていく。


 ――解放された少年を抱きとめ、救った安堵を、シル。


「夕凪? きみは、夕凪か?」

 意識のない少年を胸に抱え、俺は愛した姫君の片鱗を感じた。


 ――やっと、出会えた。あなたをサガシテイタ。


 これは数奇なる運命に翻弄されてきたエリート退魔祓い師と愛した姫君の再会の物語の始まり。


 ――な、んで? どうして姫君が男の姿で、産まれたのか。もう、オレトアイシアイタクナイノ?


 そんなの構わない。

 憑依だろうが前世だろうが、魂は夕凪のもの。

 間違いない。

 この少年は夕凪だ。


 我は妻の夕凪を探し続け、何度も生まれ変わってきた。


 俺が守ると決めた愛しき姫君、あなたもまた同じ使命と力をもたらされたのか。


 ああ、出会えた。

 ようやく果たせる。いにしえの二人の約束。

 交わした、再会の約束。

 死の間際に遺した。

 ずっと愛してる、ずっと想っていると。


 ――二人、再会す。激しく愛し合い、烈火の戦いが幕を開ける。


 ただ、あなただけを俺は愛しているよ。

 夕凪……。






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