第25話 過去④



 生活が少しずつ安定してきだし、貯金も溜まり始め、高校生活も落ち着けるようになったとき事件が起きた。


 高校の授業中。放送が鳴った。

 「2年〇組 黒宮茉優さん。至急事務室まで来てください。親族の方がお見えです。」




 事務室に行くと、そこには愛羅がいた。


















「私、妊娠したの」


















 は?

















「…………どういうこと?」


「だから、妊娠したの!」


「誰と?いつ?は?」


「この前、合コンに行ったとき!誰かはわかんなーい」


















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「……………………わかんない?…………」


「うん。わかんないんだよねー。でも検査してみたら妊娠してたの!!!」


「なんで……………………」


「だから、“出産費用だして”」


















 





 ——————堪忍袋の緒が切れる音がした。

























 「ばかじゃねーの!」


「はぁ?なんで怒るわけ?出産はうれしいことでしょ?」


「誰が育てるの?誰の子かもわからないような子供?……」


「茉優も一緒に手伝ってよね。シングルマザーって大変なんだからね。」


「馬鹿言わないで。誰が一緒に育てるか!お前から生まれてくる奴なんてロクじゃないに決まってる。頭沸いてんじゃないの」


「なんでそんなひどいこと言うの?はぁ?金早く出せよ、金食い虫が。私は高校いけなかったのに、茉優は高校に行かせてもらってんだよ?本当は私のためのお金だったんだから、出産費用出すのも当然だよね?」


「そんな金ねぇよ!だれが、だれが、必死でバイトしてると思ってんだよ!だれが、だれが……だれがお前の親父に頭下げて養育費もらってると思ってんだよ!」


「いっぱいお金もらってんじゃん!」


 「そのお金、全部お前が使ってなくなるんだよ!」


「はぁ?だってしょうがないじゃん。高い化粧水とかじゃないと私の綺麗な肌が保たれないの!きれいじゃないと男に振り向いてもらえないの!」


「うっせーな!」




 無我夢中で怒りを愛羅にぶつけた。途中からあまり覚えていないが事務員の人が私たちを止めてくれたらしい。




 家に帰ると部屋は荒らされていた。今まで見たことないくらい悲惨な状況だった。愛羅はベットに座っていた。

「茉優!考え直してくれた?」

 もう、こいつに何を言っても無駄だと思った。

「……下ろしてください」


「はあ?」愛羅が私の頬を叩いた。


「下ろすなら、費用払うから。出産費用は出せない。お願いします。」

 土下座した。なんでこんな嫌いな相手ばっかりに土下座しないといけないのだろう。


「もういい!他の人に養ってもらうから。この金食い虫、貧乏人、ケチ!」


 そう言って、愛羅は夜の街に消えていった。























 ――――――いなくなった?
























 ――――――――――――いなくなった?


























 ――いなくなった




















 ――――――――――いなくなった!





















 ――――――――――いなくなったんだ!!




































 その瞬間、私は自由を手にした。













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