この彩のない世界で。
UedaMasaki
職掌
太陽が、山並みの先から頭を覗かせ、日光を差し込ませていた。
辺りはまだ静かだったが、高速道路が通っている方向にて、暴走族のコールが聞こえてくる。私は毎朝の散歩を邪魔されたように感じるから、苛立ちがこみあげてくる。
私に胆力があるならば、彼らのたまり場にでも行って説教の一つでも聞かせてやりたい物なのだが、懦弱な私だからイメージの中で済ませる。諦め癖もこの頃付いてしまったようで、悲観的な人生を歩んでいくのではないのかと、日々悶悶としている。
ふと顔を上げて辺りを見渡してみた。どこかから冷気が出ているようで、それが私の足元に絡みついている。私は、多少の不気味な様子に惴惴し、歩みが止まった。
気分の問題かもしれないが、辺りの暗がりが広がっているように感じる。
周りには廃墟が立ち並び、家からも遠い。山のふもとという事もあって、害獣と遭遇したくもない。だから立ち止まっているのは得策ではないが、私はどうしても動くことができなかった。
腕時計を覗くと、もうそろそろ帰宅してパンを焼かなければ仕事に遅れる時間だ。急がなくてはならない。
私はなんて弱いのだ。ただ突っ切ればいい物を、何に恐怖し怯えている?息苦しいあの生活に戻りたくないからなのだろうか?
私は考えを巡らせていた。自分の気付かぬうちに何度か思考がループしていたが、そうやって行くうちに辺りが温かくなっていることに、しばらくして気が付いた。それに慌てて粗々と時計を見ると、もう帰らなければならない時間だ。
小さいころから私はこういうところがある。考えすぎて、何かを見失うことがあった。これだから駄目なのだ。
私は、一歩、後ずさりをした。驚くほどに軽やかだった。先を見る勇気がないなら、後ろに下がればいい。来た道を戻るだけでいいのだ。
私はその場を後にし、段々と賑やかになっていく街を傍らに家路についた。
この彩のない世界で。 UedaMasaki @StudioAMONE
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