第6話 葬儀屋へようこそ
一年後。まゆはなんとかバイトを続け、大学には進まずに就職した。
就職先はミトリが社長の葬儀屋だ。
「助かったわーミトリくん。私、勉強ホントは苦手だったんだー」
今まで無理やり取り組んでいた受験勉強から解放されて、まゆはイキイキしている。
バイト代よりもはるかに多いお金を家に入れることもでき、まる太もゆゆ子も順調に大きくなっていた。
今日は大往生で亡くなられた男性の葬儀だ。
湯灌をミトリが行った後、まゆがそこに死化粧をほどこす。
「なんだか、まゆさんを湯灌した日のことを思い出しました」
「ミトリくん、今日死にたい気分?」
拳を握って睨むまゆから、ミトリは目を逸らす。
今日も窓からあたたかな陽が差し込み、この葬儀場は光に包まれている。
黒服2名が棺を抱え、その前を二人で歩く。
「行きましょうか」
「オッケー」
明るいまゆの声が、葬儀場に響いた。
【おまけ】
「誰……?」
最近喋れるようになったゆゆ子が、風呂上がりのまゆを見て絶句する。
まる太もいつもの饒舌を封印し目を伏せた。
「おねーちゃんでしょ!?」
アキトが苦笑いしながら、仏壇に手を合わせた。
一人少なくなってしまったこの家族だが、少なくともこのアパートは以前よりずっとにぎやかになった。
葬儀屋ミトリ 木端みの @kihashimino
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