いくらに精子ぶっかけたら半魚人産まれたったww

@ooemansaku

第1話

第一章 伝説のバカ行為


「お前さ、いくらって“命”だと思わね?」

 宅飲みでテンション上がってた俺は、テーブルに並んだコンビニ寿司のパックを見つめながら真顔でそう言った。

「は?急にどうした、田中」

「いやいや、だって卵じゃん?魚の赤ちゃんじゃん?命だろ? な?な?」

「だから何だよww」

「もし、ここに人間の命も混ぜたらどうなるんだろうなって」


 俺の言葉に場が一瞬静まった。……からの爆笑。

「はっはっはwwwwお前頭湧いてんのかwww」

「人類の禁忌www」

「絶対やめろよ?www」


 酒に酔った俺は、止められたらやりたくなるタイプだった。

「じゃあ証明してやるよ。見とけ」

 俺は寿司パックのいくら軍艦を一つつまみあげ、トイレに消えた。


──五分後。


「はい、これが人類の新しい扉だ」

 戻ってきた俺が差し出したのは、照明に照らされてぬめっと光るいくら軍艦。

「お前ほんとにやったのかよwwwww」

「お前もう神様に消されるぞwwwww」

「待て、冷蔵庫に入れるなよ!絶対入れるなよ!」

「入れるわwww」


 俺はドヤ顔で冷蔵庫にしまい、扉を「バタン」と閉めた。

「冷蔵庫の扉を開けるのは、俺の右手の宿命だからな」

「意味わからんwwww」


 酔っ払いの夜はそんなくだらない笑い声で終わった。



 翌朝。

 頭痛と胃もたれを引きずりながら、俺は台所に立った。冷蔵庫の中から……何か生臭い匂いがする。

「うわっ、やべ……忘れてた」

 昨日のいくら軍艦だ。いや、“俺の命”がかかったいくら軍艦だ。

 そっと扉を開ける。


 ぬめぬめ……。

 生ゴミの腐敗とは違う、潮のような、血のような、生臭さ。

 パックの中で、イクラたちがぶくぶくと泡立ち……膨らんで……


「う、動いてる……?」


 オレンジ色の粒が互いに溶け合い、ひとつの塊になっていく。

 その表面が割れて、中から半透明のなにかがぬるっと這い出してきた。


 手のひらサイズの赤ん坊。

 尾びれが生えて、エラが小さく開閉し、大きな黒い瞳がこちらを見つめている。

 なのに、手だけは人間と同じ。五本の指でぎゅっと空気を掴もうとする。


「な、なんだよこれ……」

 吐き気がこみ上げる。俺は本能的に後ずさりした。

 これはネタじゃない。昨日の悪ふざけが、現実になってしまった。


 その時だった。

「キュ……」


 赤ん坊はか細い声を漏らし、俺の指をぎゅっと掴んだ。

 生温かい感触が伝わる。


 俺は動けなくなった。

「……お前、俺を見てるのか」


 笑いも酔いも吹き飛んだ。残ったのは、言葉にならない震えだった。


次は、

A:第2章「イク育児日記(ギャグ+愛着)」を続けて執筆する

B:

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