「サイコロ」

 そうやって、いつもお前らは! また俺だけを除け者にしようってのか……!

 ははっ! なんだよ、みんなお前の味方ってか? そんなの、そんなの俺には一人だって──

 ……まぁ、いいさ。お前と俺の運命、こいつらで決めようか。


 ダイス? いいや違うね。──ただのダイスじゃないんだなぁ、これがぁ!


 何を隠そう、これこそが天竺より伝わり中華で花開いた『崔乎路サイコロ』でござい!


 おいおい、不勉強だな。こいつは琉球にも伝わった由緒ある品だぜ? ちょっと調が足りてないんじゃないのかな?


 ……サイコってのはつまり動かすことだな、うん。ロはそのままみちってわけだ。お前に、これの意味するところがわかるか?


 つまり、だ。これは路を左右する、運命のダイスってことなんだよ。由来を辿ると、こいつは元々は占いの道具なんだ。

 古くは動物のの骨を用いていた。ピンと来るか? そう、卜占ぼくせんさ。甲骨文字なんかで知られる由来は耳にしたことがあるだろう。

 骨に文字を刻み、炎で熱する。そうすると骨は崩れるわけだが、その割れ方で吉凶を判断した。人類はいつまで経っても神に祈り、ただ賽を振るのみ。なんとも切ない話だろ? 人が見る夢なんてのは古来より変わらず、ずっと叶わないままだ。まったく、敵わないよな。


 ただ、悲観する一方で"そこ"に夢を見たのさ。崔乎に当て字としての意味を与えた。それが『Psycho』だ。まぁ、聞いたことはあるよなぁ? 神の決めた運命とも言える崔乎路を、精神的な語彙に閉じ込めようとした。

 人の精神に可能性を見出した、というかこれも一種の祈りだな。とどのつまり、人は自分の手で運命を握ることを願ったのさ。


 さぁて講釈も長くなっちまったな。お喋りは嫌いじゃないが、そろそろスッパリ決めちまおう。


──奇数なら俺様の勝ち、偶数なら俺の負け。ただそれだけ。シンプルだろ?


 いざ決着の時と行こうかァ!


 結果、は……。結果は、サンミチの丁。俺の負けだよ。


 決めた通り、旅行へは三人で行けばいいさ。俺は勝手に行かせてもらう。

 なんだよ、その目は。これはあくまで『一緒に沖縄旅行に行くかどうか』ってだけの話だろう? 俺に来るなって話じゃなかったはずだ。


 だいたい、お前らもわかってて茶番に付き合ってただろ? 寂しがり屋の俺様が、初日の都合つかない程度で旅行をフイにするものかよ。


──デタラメ? それでいいじゃないか。少しは楽しかったんだから。サイコロの出目一つ取っても、好きに選んでいいだろ?

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