長年連れ添った夫婦のお話です。メールやチャットではなく、「今から帰る」と電話で伝えるだけでロクに言葉も交わさないという、少し古風で頑固そうな旦那さん。言葉には出さないけど、その心の中は奥さんへの愛で詰まっています。
奥さんの旦那さんへの気持ちについては、直接は語られないのですが、きっと旦那さんのことを愛している、相思相愛の関係なのだろうということが行間からも読み取れました。
そんな彼らに起きた出来事。キャッチコピー「悲しい帰るコール」の本当の意味が分かった時、決してアツアツではないけれど、その愛が深いものであったことを知り、ただただ切ない気持ちになりました。
切ない気持ちになるホラー作品でした。
「今から帰る」と、電話でいつも短い連絡をしていた主人公。それが日々のルーティーンで、特に細やかな気遣いとかを示すようなことはしない。
でも、それが彼にとっての「当たり前」となっていた。
そんなある日、家に帰ろうとしたところで、彼はある異変を察知する。
本作でテーマになっているのは、何よりも「当たり前」という言葉だと読み解けます。
特に意識もせず、ごくごく当たり前のこととして繰り返す行動。ほとんど意図せずにやっているため、「今から帰る」を電話したことも、その一分後には忘れてしまうようなもの。
こういう日常の当たり前は、普段意識することがないからこそ、「当たり前じゃなくなった時」に妙な尊さを持つものでもあります。だからこそ、自然と人の心に沁みこむものでもある。
ラストで明かされる「真相」から、彼にとっての「当たり前」だった習慣がどれだけのものだったのか。衝撃の感覚と共に、しみじみと感じさせられるものでもありました。