17歳【無残】

黒巻雷鳴

17歳【無残】

「遅刻、遅刻ぅ~」

 今朝は寝坊したけれど、健康のために朝食はしっかりと食べた。登校時刻も駅まで走ればなんとかなりそうだ。

 わたしの前方にも、同じ学生服の女の子が走っていた。すれ違いざまに「おはよう!」と元気良く声をかける。

 次の瞬間、驚きのあまり転びそうになった。

 なぜならその女子生徒の顔が、わたしと瓜ふたつだったからだ!

 この世の中には、自分とそっくりな人間が3人はいるというけれど、同じ高校に通っているなら噂になって知らないはずがない。

 話しかけようか一瞬迷ったけど、遅刻しそうなのでそのまま走り続けた。

 と、その時。

 行く先にまたしても同じ学生服を着た女の子がいた。しかも天下の往来のど真ん中で、パンツを脱ごうとしている。

「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ?! なにしてるのよ、あんた!」

 わたしは少女の左肩を掴んでやめさせようとした。

 そして、絶句する。

 わたしだ。

 プリーツスカートに両手を潜り込ませてパンツを脱ごうとしていたのは、わたしだった。

「ウソでしょ……なんなのよ、これ……。まさか……ひょっとして、ドッペルゲンガー!?」

 なんということだろう。よりにもよって、遅刻しそうなのにドッペルゲンガーが見えてしまうなんて!

 わたしは絶望し、天を仰いだ。

 カラスの鳴き声が騒がしい。

 もう1人のわたしが空を飛んでいたからだ。

 ……って、わたしノーパン! いったいなにがどうなれば、人間はノーパンで空を飛ぶのか。いろいろと怖くなってきたわたしは、今日は学校へは行かずに家に帰ることにした。

 と、その時、女性の叫び声が突然聞こえた。

「誰か! ああ、おじいちゃん、しっかりして!」

 人混みを掻き分けて覗けば、老人が苦しそうに仰向けの状態で倒れていた。そのそばで女性が両膝を着き、オロオロとしている。

「誰か! この中に女子高校生の方はいませんか!? おじいちゃんに……おじいちゃんに、脱ぎたてのおパンティーを嗅がせてあげてください! 発作が治まるんです!」

 はい来た、嫌な展開。

 わたしは人知れずその場から立ち去ろうとした。

 したんだけれど、いつの間にか女性に片腕を掴まれて引き止められる。

「お願いします! どうか、どうかおパンティーを恵んでください!」

「いや、あの、嫌ですマジで」

 当然断るわたしの言葉に、すぐさま周りの野次馬たちが反応する。

「いいじゃねえか、おパンティーくらい!」

「そうだ、そうだ! 嗅がせてやれよ、おパンティー!」

 こいつら……狂ってやがる。

 それからもパンツを脱がないわたしに、罵詈雑言が浴びせられた。

「アーッ、もう! わかったわよ! 脱げばいいんでしょ、脱げば!」

 わたしは観念して、プリーツスカートの中に手を入れる。

「──南無三ッ!!」

 そして一気に下着をずりおろし、涙目で女性に手渡した。

「ありがとうございます! これでおじいちゃんが助かります!」

 女性は倒れたままのエロジジイに駆け寄ると、脱ぎたてホヤホヤのわたしのおパンティーを鼻に押しつけた。

「ハアハア…………くっさ」

 わたしは恥ずかしさと怒りのエネルギーで大気圏まで一直線に吹き飛んだ。







 ─終劇─


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17歳【無残】 黒巻雷鳴 @Raimei_lalala

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