戦車×女神のバディ物...? なんじゃそれは。
本作を目にした読者は、真っ先にそう思う事でしょう。
「ミリタリー系? なんかちょっと重そう...」と立ち去ろうとするアナタ!
ちょっと待って下さいな!
先ずは一章...いや、主人公スタッガーが異世界に降り立つ三話まででも構いません。
是非足を運んでみて下さいな。
剣と鎧、魔法飛び交う「ザ・ファンタジー」の世界に、ゴリッゴリのSF兵器が突如飛来する。
本来交わるはずのない二つの世界が密接に絡み合う、唯一無二の作品です。
ドラゴン相手に真正面から取っ組み合う、迫力の戦闘シーン。
多脚戦車だからこそ成せる、強引なまでの近接戦。
幻想生物を戦車の装甲とパワーで迎え撃つ、これぞロマンの塊です。
天架けるガルーダさえも、その餌食。
速射砲は正確無慈悲に獲物を捕縛する、何人たりとも決して逃がさない。
まさに規格外。
ファンタジー世界を塗りつぶす、圧倒的な兵器性能。
内包された駆動系の数々――その緻密な描写に舌を巻きます。
もうね、ワクワクが止まらんのですよ。
相棒である女神とのやり取りも、これまた秀逸。
スタッガーの性能に振り回され、その都度涙目になる女神様。
ドタバタ劇はくすりと笑える一方で、互いの弱みを見せあいながら徐々に信頼を深めて行く様に心揺さぶられます。
兵器の描写は一級品、バディ物として見ても面白い、その上ファンタジー要素も楽しめると来た。
隙を与えぬ三段構え、こりゃあ読まなきゃ損ってものですぜ!
三日かけてようやく追いつきました。
「ラストクルセイド」に引き続き、圧倒的「鉄」の匂いと、圧倒的超科学兵器の武骨なロマンを、圧倒的描写力で容赦なく異世界に叩き込む、何もかもが「圧倒的」な黒堅ケトル先生の最新作、やはり読み応えの方も「圧倒的」です。
前作でもそうでしたが、この作者様は「意志持つ武骨な兵器」が好きすぎますね?
男の子のロマン全部詰め込んだようなものだから仕方ないか。
本作の良きところは、この世界基準で当てはめても圧倒的オーバースペックの兵器である主人公が、たった一つ、「魔法」という概念に対して無知であるという点でだけで、自身の存在を「弱い」と断じている点です。
だからこその攻防があり、だからこその戦略的駆け引きが生まれ、だからこその物語の進ませ方があるわけですね。
これによって、一方的なチート蹂躙物語にならない奥深さが生まれています。
また、戦略兵器故の「価値観」というのもこの物語を読み進めていく上での大きなポイントです。
軍人のそれと近しくもそれ以上に冷徹、人間的倫理観を大きく逸脱しているが故の躊躇いのなさ、そして人間的頭脳よりもプログラムに近しいからこそのシステムやデータ的な要素への興味関心の高さ。
そういったものと人間的な価値観との乖離具合を楽しむのもまた、本作の魅力ですね。
読み進めていく間に、規格外の度合いがどんどんと大きくなっていく本作品、是非ともお手に取って、そのスペックの高さを肌で感じ取っていただきたいです。
この小説には、精密な描写で書かれる戦闘シーンはもちろん、軍人らしさと人間味を共に持つ主人公、感情表現が豊かで「「でもそれだけの飾りじゃない」」女神様、など魅力的なキャラクター同士の掛け合いが含まれます。
そのためロボットものに興味がある方はもちろん、そうでない方にもおススメできます。白はガンダム緑はザクと思っている私が読んでも面白いので間違いないでしょう。
このレビューは「第1章 異世界△エンゲージ」までを読み終えてのものですが、彼らがこの世界でどのような足掻く者になっていくのか楽しみです。
それでは、一先ずレビューはここまでにして、私は17話に進もうと思います。
異世界転移ものに目新しさを感じなくなっていた中で、久々に「出会いの段階で違う」と感じる作品でした。
舞台設定や導入の構造が、よくある転移系とは明確に異なります。
主役は人間ではなく、ヤシガニ型の多脚戦車。
しかもその存在がただのネタではなく、物語の中でしっかり機能しているのが印象的です。
SF的な兵器描写と、異世界ファンタジーの要素が自然にかみ合っていて、設定の説明も過不足なく、読むテンポを妨げません。
最初は異質さに引っかかりながらも、
気づけば“これでしか描けない物語”になっている。
そんな読後感のある作品でした。
まずは一話、読んでみてほしいです。確実に記憶に残ります。