第12話 エピローグ

「お兄ちゃん!!また靴下脱ぎっぱなしにして!!

洗濯機に入れろっていつも言ってるよね!!」


結月ゆづき、わりぃわりぃ。

すっかり忘れてたよ」


「お兄ちゃん認知症なんじゃないの?

昨日も言ったこと忘れるなんて!!」


結月は腰に手を当ててご立腹だ。


「失礼な!! 俺はじーちゃんじゃねぇっ」


「ならちゃんと靴下洗濯機に入れてよね!!」


「いちいちうるせぇーな!分かったよ!

入れる入れる」


「何、その言い方ー!!」


「またあの二人喧嘩してるわ」

リビングで洗濯物を畳んでいる

二人の母はため息をついた。


「まあまあ。喧嘩するほど仲がいいって

言うじゃないか」


「それもそうだけど」

母は立ち上がり大きく息を吸う。


「コラっ!!2人とも!!

いい加減にしなさいっ!!」


母の怒声が夜の街に響き渡った。


翌日、ふたりは昨日の件を引きずったまま

ムスッとした顔で学校へと向かっていた。


「おっはよー!! って、どうしたの。2人とも

タコみたいな顔しちゃって」


「「タコじゃないっ!!」」


「こーゆーとこホントそっくり。

さすが双子だね。で、何があったの?」


「お兄ちゃんがくっさい靴下を

洗濯機に入れなかったの!!」


「はぁっ?!別に臭くはないだろ!?」


「伊吹くん、論点そこじゃないけどね。

2人とも落ち着いて」


どうどうと嗜めているのは2人の友達、理央である。


「だってだって!」

結月は納得いかない表情をするが

理央はめんどくさくなり、

別の話題に移ることにした。


「それより、最近異世界転生もの

読み始めたんだけど2人は異世界って信じる?」


「「信じる」」

声がハモリ結月と伊吹は嫌な顔をした。


「へー!意外。結月はまだしも伊吹くんもなんて。

どうして?」


「それは……内緒」


「何それ。内緒って言うのが

かっこいいとでも思ってる?」


「うるせえな!」


「……でも、わたし時々異世界転生する夢を見るよ」


結月は道路の向こうを見つめる。


「色んな異世界に転生させられて

これはファンタジーハラスメントです!!

って叫んでるの。夢だけど夢じゃない感じ。

もしかしたらわたしは異世界に転生してたのかも。

なんちゃって!」


その言葉に伊吹は目を見開く。


「何それ〜!結月って面白い夢見るね!!」


そうか、覚えていないよな。


でも、あの出来事は自分だけが覚えていればいい。

結月が覚えていなくとも俺にとっては

大事な思い出だから。


人が過去生を忘れるのは前世の記憶に

苦しめられることなく生きていくためだと

神様に聞いたことがある。


でも、異世界転生案内人として

美月と過ごしていた時間は決して

苦しい思い出なんかじゃない。


だから、これからも度々美月と笑い合った

あの時間を思い出すのだろう。


美月はファンタジーハラスメントだと

度々口にしたが山吹は美月に幸せになってほしくて

美月を異世界転生モニターへ推薦した。

散々な結果になってはしまったが

あの時間はとても有意義なものだった。


そして今度は家族として美月と笑い合える。


山吹は笑顔を浮かべて結月達の元に

駆け寄っていった。








(終わり)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

これはファンタジーハラスメントです!! 藤川みはな @0001117_87205

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ