エンディング

美咲はイケメンの彼と並んで歩きながら、胸がいっぱいだった。

「今度こそ、本当の幸せが始まるんだ」

そう思うと、自然と笑みがこぼれる。


ふとバッグの中にある「魔法のノート」が気になった。

――健司との再会、別れ、そして今の出会い。

全部、このノートに書いたことだった。


美咲は立ち止まり、ノートを取り出す。

「……もう、こんなのいらない」

そう呟きながら、近くのゴミ箱に放り投げた。


ひらひらと舞い落ちるページ。

風に煽られ、路地裏へと滑り込んでいく。


――その路地裏。

ノートを拾い上げたのは、あの大阪のおばちゃん占い師だった。


「やれやれ……ほんまに願い書き散らかして、アホちゃうか」

おばちゃんはノートをめくりながら、鼻で笑った。


「せやけど美咲、あんた忘れてへんやろな?

タダで手に入る幸せなんか、この世にひとつもあらへん。

願い叶えてもろたら、そのぶんキッチリ“ツケ”は払わされるんや」


ノートをパタンと閉じる音が、夜の路地に乾いて響いた。

おばちゃんは振り返りざまに、にやりと笑う。


「せいぜい気ぃつけや。ええ男捕まえたつもりでも……財布までごっそり持ってかれるかもしれんで?」


高らかに笑い声を残して、おばちゃんはノートを抱えたまま闇に消えていった。


――その瞬間、美咲の未来に広がる光と影のどちらが勝つのか、まだ誰にも分からなかった。




 

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魔法のノート、取り扱い注意! 神田遥 @moririn165

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