第一話 寄生者

2024年、1月1日


「このバスは俺が乗っ取った!妙な動きはするなよ、俺は銃を持っているんだからな!」


「新年早々ついてないな…」


「そこのガキ、なんか言ったか?俺を怒らせたらその頭に風穴が空くぜ!それに、俺は異能で手から炎を出せるんだ、逆らったりしたら少なくとも生きては帰れないぜ」


「いえ、独り言です…」


「紛らわしい事はするなよ。」


「パッ」



「おい、お前、何を…熱ッ、お前も似たような異能なのか?とにかくそこのガキ!銃を返せ!返さなきゃ燃やしちまうぞ!」



「残念でしたね、僕は触れた人の異能を使えるんです。僕は今あなたと同じ異能を使えるし銃も僕が持っている。観念してください。」


「警察を呼びますね、」


「待て!警察には電話するな!警察に捕まるくらいならこのバスごとお前を燃やしてやる!刑務所で暮らすよりよっぽど良い!」


「異能を使ったバスジャック、脅迫。重罪なはず。最悪この銃であなたの頭を撃っても正当防衛で済むと思いますよ。むしろ感謝状がもらえても不思議じゃない。他に異能を持った人がいればその人の異能も使えますしね、」


「では、改めて警察を呼びます。」


「クソッ、じゃあバスごと燃やして自爆してやる!」


「ではこの異能と銃を使ってあなたを殺すしかありません。バスが爆発する前にあなたを銃で撃ち抜けば他の物に火が燃え移ることもありません。」



「君、警察に通報する必要はないよ。」


「あ?なんだテメェ、人が少ないバスを狙ったのに、もう一人いたのか、そうだ!コイツが人質だ!何かするような仕草をすればコイツは黒コゲだ!」


「私は警察です。」


「警察?俺はついてるな、警察相手にもっと良い人質になるじゃねぇか。」


「あなたじゃ私は殺せないと思いますよ。」


「あん?俺は異能を使えるんだぞ、あのガキはともかくお前は…」




「なんだ!ここは何処だ!ここから出せ!殺すぞ!」


「これで一件落着。」


「どうなってるんだ?犯人が消えた…」




「君、大丈夫かい?」


「はい、あなたは?」


「私は神奈川県警の雨宮と言うものだ。いまここら辺で捜査をしていてね。」


「そうだったんですか。でもさっきのはどうやったんですか?」


「あれは私の異能でね、鏡に反射した顔を見るとその中に閉じ込められるんだ。

それはそうと、君。面白い異能だね、触った人の異能を使えるんだろう」


「15分だけですけどね、」


「君、捜査に協力してくれないかい?私達が追っている事件を解決するのに役立ちそうだ。」


「僕の異能がですか?」



「ああ、それは美弥妃高校の制服だろう、私の弟が通っていたから分かるよ。そこならアルバイトができるはずだ、給料もしっかり払うからアルバイトとして捜査に協力してくれないかい?そうだな、時には体を張ってもらうこともあるだろうから、時給は2500円でどうだい?」



「本当にいいんですか?時給2500円なんて資格を持っていても簡単には貰えない額ですよ、僕なんてよく「その異能では将来優秀にはなれない」って言われているのに」


「いや、むしろそんな強力な異能を持っている人はそれ位の額を出しても動かないよ、他の人の異能を使えると言うのは場合によっては無敵になれる、異能を持っている人と戦う時も異能をコピーして武器を使えば勝てるじゃないか、

いわゆる「寄生者」ってやつだよ、かっこいいじゃないか。あぁ、もちろん良い意味でだよ。」


「それで、私達の捜査に協力してくれないかな?別に絶対とは言わない。」



「ありがとうございます。僕もその捜査に加わります。」


「ありがとう、名前を聞いてなかったね、教えてくれるかい?」


「間宮透です。」


「透くんか、これからよろしく頼むよ」

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