カクヨム短歌賞1首部門 応募作品

槇原 冂

カクヨム短歌賞1首部門 応募作品

東へと日付変更線を越ゆ君とゐる日をもう少しだけ


深夜めく僕と君とのこれからはただ終はりへとしらじらと明く


恐竜の卵のごときその殻を君が内から破る日の来る


賭ければと問ひたる君の唇がシーソーのやう天使と悪魔


短夜に君に宛てたる手紙書くそれを思へばこんな模試など


西向きの部屋を選んで住む君の心に住まふ僕でありたし


やはらかな言葉の裏にあいてゐる気孔のやうな君のくちびる


リコーダーで君の飛ばせしコンドルを僕は追ひゆく気づかれぬやう


汚れなき世界を定義するのなら僕と君との和の補集合


帰宅した後のことなど知るものか君に伝へるここで伝へる


からつぽの本棚残しゆく君の何ページめに僕の栞は


当たらぬと悪評高きうらなひの補数を取りて君へ挑まん


鉛筆で描きし君の横顔に色づけてゆく思ひだしつつ


ドーナツは穴があるからいいのだと笑ひて君は僕を頬ばる

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