キーパーソンである中学生、瀬良凛と相沢雫。この二人が受けるいじめの描写が、まず壮絶です。
「親に打ち明ければいい」「警察に訴えればいい」「学校に行かなければいい」……そんな安直なアドバイス、口が裂けてもできません。
これはもう逃げることも立ち向かうこともできない、超常的な力に頼るしかないと、読者も思ってしまいます。
そしてとうとう惨劇の幕が上がる。作者様は微に入り細に穿ち、目を覆いたくなるような人体破壊の様子を描写します。
もっとも、この物語の本当に恐るべきところは、事件が起こって終わりでも、事件が解決して終わりでもないということ。
凄惨な事件のあとに待ち受けるさらに凄惨な展開に、何度息を呑んだかわかりません。
人間はここまで残酷になれるものなのか。
残酷な仕打ちを受けた人間の怨みは、未来永劫消えないものなのか。それどころか増幅さえするものなのか。
人間の怨みの深さや醜さや愚かさに震撼させられる、異色の学園ホラーです。
ひとかけらの救いもない暗黒の世界に、あなたも引きずりこまれ囚われることでしょう。
『カ・エ・シ・オ・ニ』は、今から四半世紀前の地方都市で起きた惨劇を軸に、現実と異界が交錯する恐怖を描いた怪異譚です。
作者、奈知ふたろ氏の筆は、静かに確実に読者の心を侵食していきます。
エピソード2の体育館でのあまりにも酷い光景は、まるで現場に立ち会っているかのような臨場感に総毛立つことでしょう。巨大な足跡、粘液質の体液……それらが示す明らかに人ならざる〝何か〟の存在。何故、こんな凄惨なことが……。
そして、この事件に関わるいじめの被害者、瀬良凛と相沢雫の行方は?
興味と好奇心を刺激し続ける展開から終始目が離せません。
何と言っても圧巻は、奈知ふたろ氏の卓越した超絶的描写力です。これでもかと言わんばかりに畳み掛ける矯激な恐怖と計り知れない深い哀しみを巧みに織り交ぜ、極上の筆致で見事に描き切ります。
伝説は、更に新たな伝説を生み、歳月を経て繰り返される。
いつ、惨劇は終わるのか……?
都市伝説や怪異が好きな方、そうでない方にも、是非読んで欲しい作品です。
秋の夜長、多くの方々に、奈知ふたろ氏の世界に浸っていただけたら幸いです。
いかに悪質なものであろうと、保護されるべき“子供”が踏みにじられていようと。
犯人もまた“子供”であれば、法と社会正義そのものがそれを庇う、社会の矛盾。
それを嘲笑するかのように重ねられる悪行が、ついに犠牲者をも憎悪と狂気に満たしたとき、その怨念は、自分たちを救い護ってくれなかった正義と秩序を一顧だにせず、社会を闇から蝕んでゆく……。
生を棄てて、あるいは生きながら“鬼”と化した“子供”たちの、悲しくも凄惨な呪詛の物語。
そのおぞましい腥さに顔まで漬かったとしても、秩序と倫理の綺麗ごとを厭うあなたに。