第58話 決着の声
黒板に刻まれた赤い文字が、クラス全員を睨みつけていた。
【ゆうま の こえで】
【みんな は えらべる?】
泣き笑いの声が天井から、壁から、床からあふれ、生徒たちの喉を掴むように響く。
◇
「……俺は笑わない!」
男子が震えながら叫んだ。
「怖くても、俺はもう笑わない!」
「わ、私も……!」
女子が泣きながら続く。
「悠真くんが真ん中に立ってるのに……私たちが笑ったら……最低だから……!」
次々と声が上がる。
「俺も!」「私も!」
笑い声はかすれ、代わりに涙混じりの声が広がっていった。
◇
梓が机を叩いて叫ぶ。
「そうだよ! みんなで終わらせるんだ! 笑わないって決めれば……仕組みは壊せる!」
里奈はぐしゃぐしゃの顔で頷く。
「……静香さん、もう十分だよ……! 私たちは笑わない……!」
黒板がバリッと割れ、赤い粉が吹雪のように舞った。
そこに大きな文字。
【みんな わらわなかった】
泣き笑いの声が止まり、教室に静寂が落ちる。
◇
背中の冷気が少しだけ和らぎ、静香の囁きが聞こえた。
【……かわれる?】
……ほんの一瞬。
静香の怒りが揺らいだのを、確かに感じた。
◇
だが。
影に捕まったままの沙耶が、ゆっくり口角を上げた。
「ふふ……綺麗ごとね。
今日ここで“笑わなかった”からって……明日も同じことを選べるのかしら?」
黒板に再び赤い文字。
【くりかえす】
泣き笑いの声が復活し、校舎全体を震わせる。
◇
俺は息を吸い込み、沙耶を睨んだ。
「……だったら証明してやる。
俺たちは“仕組み”を繰り返さない。
そのために——お前を超える!」
沙耶が笑う。
「いいわ。じゃあ、最終幕を始めましょう」
黒板が砕け、窓が一斉に割れた。
泣き笑いの顔が吹き荒れ、学校全体を包み込む。
——教室での試練は終わった。
次は、沙耶と静香の最終決戦。
俺を笑っていた女子達が青ざめて俺を見るけど、それは俺じゃなく背後です unknown @hinikuya
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