第58話 決着の声

黒板に刻まれた赤い文字が、クラス全員を睨みつけていた。


【ゆうま の こえで】

【みんな は えらべる?】


泣き笑いの声が天井から、壁から、床からあふれ、生徒たちの喉を掴むように響く。



「……俺は笑わない!」

男子が震えながら叫んだ。

「怖くても、俺はもう笑わない!」


「わ、私も……!」

女子が泣きながら続く。

「悠真くんが真ん中に立ってるのに……私たちが笑ったら……最低だから……!」


次々と声が上がる。

「俺も!」「私も!」

笑い声はかすれ、代わりに涙混じりの声が広がっていった。



梓が机を叩いて叫ぶ。

「そうだよ! みんなで終わらせるんだ! 笑わないって決めれば……仕組みは壊せる!」


里奈はぐしゃぐしゃの顔で頷く。

「……静香さん、もう十分だよ……! 私たちは笑わない……!」


黒板がバリッと割れ、赤い粉が吹雪のように舞った。

そこに大きな文字。


【みんな わらわなかった】


泣き笑いの声が止まり、教室に静寂が落ちる。



背中の冷気が少しだけ和らぎ、静香の囁きが聞こえた。


【……かわれる?】


……ほんの一瞬。

静香の怒りが揺らいだのを、確かに感じた。



だが。

影に捕まったままの沙耶が、ゆっくり口角を上げた。


「ふふ……綺麗ごとね。

今日ここで“笑わなかった”からって……明日も同じことを選べるのかしら?」


黒板に再び赤い文字。


【くりかえす】


泣き笑いの声が復活し、校舎全体を震わせる。



俺は息を吸い込み、沙耶を睨んだ。

「……だったら証明してやる。

俺たちは“仕組み”を繰り返さない。

そのために——お前を超える!」


沙耶が笑う。

「いいわ。じゃあ、最終幕を始めましょう」


黒板が砕け、窓が一斉に割れた。

泣き笑いの顔が吹き荒れ、学校全体を包み込む。


——教室での試練は終わった。

次は、沙耶と静香の最終決戦。

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俺を笑っていた女子達が青ざめて俺を見るけど、それは俺じゃなく背後です unknown @hinikuya

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