第12話「第二幕が上がる」
俺と雪姫さんは事前準備を整える。三日間の修行で以前よりも感覚が研ぎ澄まされた状態が出来た。
今回は前々から目標として掲げていた妖術を取得することを中心に進めた。実際に異術が三日間で完全に取得できると思って取り組んでいた訳じゃない。何せ妖術に触れた経験は少ないが故に本格化した修行は初めてだった。それを踏まえた上で修行して今がある。
「楽典様は感覚は掴めましたでしょうか? やはり、急いで修行に取り組まれたが故に多少の困惑を抱かれていたと思います」
「もちろん。初めての段階で大いに発揮させることは俺でも出来ない。けど、雪姫さんの協力で前回よりも強くなれた気がします。それに多少なら身体を鋼化させることが出来る時点で大きな収穫だったでしょう、後は一戦の中で大きく成長を遂げる経験に期待です」
「ご立派になられました。まだ貴方様は修行を始めて間もない身です。当初は異術知識もない少年がどこまで出来るのか不安でいっぱいでした。けど、さすが星楽様の息子さんです。これからも活躍を期待しています」
「任せてください。俺は時期当主として命を受けた者。その使命は全うしますよ?」
俺は雪姫さんに向上意思を見せる。それを雪姫さんは努力を予兆する姿勢が見れたことに期待しているような表情を窺わせる。雪姫さんが見せてくれた期待のこもった笑顔は凄く魅力を感じで美兎に対する罪悪感が起きた。
もう少しで標的となる茂国が所有する敷地が見えて来る。
実は事前に連絡して襲撃予告を出した時に向こうから承諾をもらえたことで俺たちが暴れやすくなったと内心で幸運に感謝を捧げた。
そして所有地に入った段階で走らせていた車が襲われる。
「ひぃ⁉︎」
バゴン! ぶちゃっ⁉︎
運転席に座る使用人が天井から振り下ろされる鉄幹で潰れる。血が飛び散る様子は最終決戦を匂わせて闘志を燃やしてくれた。
「急いで降りましょう。次が来ます」
「分かりました」
そうやって車を降りた先に立ち塞がる三人の刺客が声を掛けて来た。
「よぉ? どうやらうちに喧嘩を仕掛けて来るなんて命知らずだな?」
「敷地内に侵入して来たんだから命は取らせてもらうぜ!」
(三人で出迎えてくへたみたいだな? けど、目前の戦力だと足止めにもならないわ)
敵が余裕を持って身構えた。それでも俺たちは大して危険を感じなかった。何故なら相手は弱いから瞬殺は容易い。それが故に俺が警戒心を弱めて憐れむような表情が浮かぶ。相手が武器を携えて準備が整えられたようにも思えるが、それだけで掻い潜れることは出来ない。
「私に行かせてもらえないでしょうか? 一瞬で片付けます……!」
「頼みました!」
雪姫さんが現在の敵を担ってくれる。意識を目前に集中させて霊力が出力を発揮する。狙いが定まった瞬間に三人足場から一瞬で凍結が完了させられる。
「ふぅ。これで終わりですか? 呆気ないですね?」
「さすが雪姫さん。お見事です!」
「これぐらいは大した敵でもないです。それよりも先を進みましょう」
「了解です!」
そんな感じで俺たちは建物内に侵入する経路を探した。
しばらくの間で侵入口を探す時間が勿体ないと判断した雪姫さんから壁をぶち壊して入る提案が出される。
「それじゃあ壁に穴を開けて侵入しましょうか?」
「それはナイスアイデアです! それじゃあ少し俺が開けてやりますよ!」
黒い閃光が球体として解き放たれた。
出力は抑えて放出された黒い閃光の球体は障害となる壁が凄い音で崩れ去る。軽く放った技が大きく壁を壊して歩みが進められる。
「ここから中を探って行きましょうか? 侵入に時間が掛かると厄介ですからね?」
「とにかく先を急ぎましょう……!」
そんな感じで俺は走って建物内を巡る。そもそも本来の道が分からない時点でどこを通ることが正解か知るはずもなかったが故の迷子状態はやむ得ないと判断している。
しかし、前々から前回の一件で身に付けた天術を使用して進めていた。この異術は【サーチ】と呼ばれるお父さんから遺伝したことは確認済みだった。本来は相手の位置を特定する効果が発揮される。相手を探す上でとても便利とも言える異術だとお父さんは言っていた。
「どうですか? 茂国はいたんですかね?」
「いや、いなません。けど、強い霊力を所持する者がこちらに二人で向かって来ていますね?」
「それならこちらから二人を出迎えて撃破した上で居場所を吐かせましょうか?」
「それが良いと思います」
雪姫さんと話し合って決めたことを実行する決意を抱いて二人を待ち伏せる。そこで二人が現れたことが確認されると雪姫さん。待機させて俺が目前の敵を倒す。
「よぉ? どうやら待ち伏せていたようだな?」
「そんなに余裕を持ち合わせているみたいだが、俺たちを倒して進めるのかな?」
「そろそろ俺が出ようと思った。何故ならウォーミングアップがしたかったからな?」
「はぁ? 調子に乗るなよ? そんなに死にたいならすぐに殺してやっても良いぜ?」
「減らず口は終わりか? なら、行くぞ!」
ここで修行した時に多少の使用が可能となった妖術を披露する。
これは実際だと切札として残す方が良いこともあるが、今から少しだけ発揮して慣らす方向性を実施する予定だった。後は残った力で茂国を倒す時が適したタイミングだと考えた。
「さて、掛かって来いよぉぉぉ!」
俺が走り出して二人に接近する。二人は近付いて来る俺を正面から構えて攻撃のタイミングを窺う。
すると、片方が先に動いて俺とぶつかった。俺は通常攻撃を仕掛ける。拳を握って殴り付けると相手はすかさず避けて反撃する。
「うらぁ!」
相手が殴打の反撃を下して来るが、それを避けないで真っ向から受け切る。殴打が顔面を確実に捉えると男は拳を抱えて苦しむ結果を辿る。
「ぐぅっ⁉︎ いてぇ⁉︎」
「それで良いぞぉ!」
俺は激痛が走った拳に意識が向いて隙を見せてしまう。そこから俺が勢い良く殴り飛ばした。
「はぁっ!」
「ぶふっ⁉︎」
大きく後ろまで吹っ飛ばされた男は転がって気絶する。大して疲労させるほどの実力を持たなかった奴が目に映った時が凄い残念感を抱いた瞬間だった。それを目撃した残った方の男が準備を整えた上で俺と交戦を本格的に始める。
「調子に乗ってんじゃねぇぇぇ!」
「ふっ。どれだけ準備しても大した差はないみたいだな?」
「んぅ⁉︎」
すでに妖術は解いている。その状態から俺は握り拳を顔面に向けて放つ。それを回避して反撃しようとする相手の拳が向かった先で俺の膝が腹部を直撃した。凄まじい威力の膝打ちが決まって残る一人も倒される。
「大して歯応えもない奴らだった。これで終わるなんて少し残念だ」
「お見事です。さすが楽典様ですね?」
「当然です。さぁ、行きましょうか?」
先が開かれたところで再び走り出す。先ほどの二人は気絶して起きれない状態に陥って聞き出せなかった。
そんな欠点を反省しながら先を急ぐ俺たちに立ち塞がる者が五人を確認する。それは事前に天術で来ると分かっていた敵だった。
その中に標的となる茂国が姿を見せている時点で大きく目的の達成が近いことが言える。
「良く進んで来れたな? そろそろ待ち飽きたから出向いてやった。しかし、俺が直々に相手することはない。何故なら四人を相手させて倒すからだ。もし、四人が撃破できた場合は好戦に応じてやろう」
「ほう? それは良いサービスだな? けど、自分が敗北を認めることになるなんて思ってないだろ? これから思い知らせてやるよ!」
「ふん! 戯言もいい加減にしろ」
今度は四人を相手することになった。こらだけの人数なら雪姫さんと二人で協力した方が良いと思っている。まずは雪姫さんに協力してもらうことを伝える。
「雪姫さんも一緒に戦ってください。この四人は以前までと比べ物にならないでしょう」
「分かりました。是非とも協力させてもらいます」
(協力を承諾してくれた雪姫さんと共闘が始まる。これを撃破すれば目標人物と戦える。そいつの撃破を完了させることが出来た時の達成感は大きいだろう。とにかく海乃と穂波を助けることも兼ねてこいつは倒したい)
俺が内心で抱いたことは戦場で遭遇した二人の少女たちを救う戦いでもある。だから、絶対に負けられないと内心に言い聞かせた上で一戦を開始する。
「行きますよ?」
「はい!」
そして俺たちは動き出した。雪姫さんと共闘を組んで一戦を交える経験は希少だと言える。ここで彼女と戦えて本当に俺は幸運だった。
まずは俺たちが動き出す様子を窺った一人が対抗して来る。
そいつは地面から炎の柱を起こして攻撃する。それは走り抜ける俺たちを足場から攻撃して憚るつもりで施された。それを確実に避けて一人目を攻撃した。
「暗閃烈拳ぅ!」
「その技は見て来た! 攻略の糸口も掴めているぞ!」
すると、雷を帯びた拳と俺がぶつかる。黒い閃光が触れて弾けるが、同時に相手の雷が対抗力を生み出す。それが拳の間に大きく衝撃を生み出した。
「ぐぉっ⁉︎」
「ぬぅ⁉︎」
互いがバランスを崩して少し後退する。その間に足場から炎が放出される。どうにか直撃を避けるために素早く後退を進めて逃れる。そこから炎を回避する目的で足を止めなかった。
一方の雪姫さんは残った二人を相手していた。走りながら瞬時に地面が上を突き上げるように凍る。しかし、それは簡単に避けられてしまう。けど、雪姫さんが一人に接近を完了させて次を狙った。
「氷剣生成。氷斬乱舞!」
氷で生成した剣を両手に握って斬り付ける。それは連続した凄まじい斬撃で避ける側は一瞬の油断も見せられない状態だった。
「はぁっ!」
「ぐぅ。ふん!」
「ふっ!」
バキンッ!
相手は瞬時に腕を凍らせて雪姫さんの剣を受け切る。硬度が強化された腕は剣でも斬ることは敵わなかった。そこから加えて斬撃を放って対応する。
しかし、一向に斬れる気配はなくて全て回避されてしまう。そこに背後から残った一人が攻撃を加える。
「ウォーターチェーン!」
「ん?」
後ろから水で生成された鎖を操って拘束を狙う。しかし、巧みに動いて回避すると足元から上に向けた氷結が起こされる。男は事前に攻撃を推測して避ける。それが確かめられたところで先ほどの男に視線を移していつの間に来る反撃を剣で受け止める。
「さすがにやりますね? けど、私は負けられないんですよ!」
瞬時に氷結を男の両側から起こして逃げ場を奪った。そこから加えて頭上で大きな氷塊を作り出して落とす。
「氷塊落下!」
「グォ⁉︎」
頭上から落とされた氷塊は両腕を凍らせて受け止める。しかし、重量に押し潰されて態勢が崩れる。攻撃するなら即座に今が適切だと思った。けど、そんな隙を与えない仲間が倒したい標的の間に水流で柱が立つ。
「くっ! 邪魔ですね!」
雪姫さんが水流の柱を凍らせて突破を試みるが、途中で進めようとした足を止めて崩れていた男の変化に気付く。
「まさか妖術が扱えるんですね……。これは厄介です……!」
「ふははっ! 妖術を扱う術師は俺だけじゃない!」
すると、背後にも妖力が生じて変身した姿を目撃する。私が相手している二人目も妖怪変化を完了させていた。二人目の妖怪変化を相手するのとになる現状で大きく雪姫さんはピンチを迎える。
「これはしんどいかも知れません。けど、楽典様を残して死ねるはずがないんですよ! さぁ、掛かって来なさい!」
ここで雪姫さんが妖術に対抗するための策を講じた。それは天術【グラビティアイズ】と呼ばれる重力操作を可能とする異術だった。これは視覚で捉えた対象者に重力を加える効果が生じる。効果発動は自由選択が可能で加えた重力が強いほど目に負担を抱える。だから、重力は少しだけ加えて相手の行動を鈍くする策が常に考えながら交戦を進める。
そして早速【グラビティアイズ】が発動する。最初は犬を思わせる容姿と化した男に重力が加わった。重力を掛けられて全身が重くなった男は不利を感じさせる。身体が重くなって動きにくい状況下で雪姫さんの攻撃を開け切れる保証がない。それを踏まえた雪姫さんは攻撃の開始を始めた。
楽典の宿命 紅薔薇棘丸(旧名:詩星銀河) @mukuromukuromukuro
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