第11話「真の黒幕」
「どうやら負けてしまったようだな?」
「だ、誰だ!」
「いやいや、良くも多くの部下たちを負かしてくれたね? これは絶対に許せない話だとは思わないか?」
泰介さんは依頼を持って来た時と様子が違った。これが泰介さんの本性で頼って来る理由としては俺をわざと戦わせるためだと真相が予測される。
つまり、俺は受けた依頼先で殺される前提が本来の目的と考えられる。奇跡的に勝ち進めてきたが、どこかで殺されていた可能性があると言える。
「殺させるために依頼して現地で戦わせたのか? なんて野郎だ」
「ふっ。修行を始めてから間もない状態で良く生き残れたな? けど、次の相手で死んでもらう。ここから生きて帰れると思うなよ?」
「あまり調子に乗るなよ? もし帰れなかった時はお父さんが探すだろう。それで真相が知れた時点でお前たちは死ぬぞ?」
俺は考えられる未来を想定した上で忠告する。しかし、泰介さんが見せた態度は余裕に満ち溢れていた。
「それなら茂国様が倒して頂けるだろう。これまで鍛錬は欠かさないで積み上げて来られたんだ。それに妖術が扱える時点で決着は分からないだろ? けど、奴を討つために一人で挑む訳がない」
(お父さんでも倒せないかも知れないなんて考えたくない。だけど、簡単に倒されることはない。それでも茂国の実力が分からない以上は勝利を確信しない方が良い)
頭で想像していた末路は謎に包まれている。これを導き出せるのは実践して結果を示す他に確かめる方法はない。だから、お父さんに対する希望は倒して欲しいと思う一択だけだった。
俺は泰介さんと対峙する中で先を進める方法を探す。けど、どうしても良い提案が出なかった。
そんな時に泰介さんの隣で黙って立っていた人物が口を開く。そいつは大柄で筋肉質であると肉体を窺って抱いた印象が侮れない状況を作った。
隣は初めて発言する場をもらって宣言した。それは俺を今から排除して生還させない方針を現状で明かす。
「残念だったよ。君は仲間になって欲しいぐらいの見込みがあった。けど、お前が星楽の息子である以上は生かして置けない存在なんだ。だから、俺と戦え。それ以外に道は用意されていない」
「生還するためなら俺も倒して外に出るしかない。もしかしたら殺すかも知れない。それでも良いなら戦ってやる」
「ほう? 度胸はあるな? なら、最後は悔いて死ね!」
物騒な一言が発せられると同時に相手が迫る。間合いを詰める速度は恐ろしいほどに素早い。攻撃が届く距離に達するなんて容易いと思わせる速度で油断している俺を攻撃した。
「うらぁ!」
「ぐぅっ!?」
真面に振るわれた拳を受ける。腕が盾の役割を果たしてダメージは抑えられた。けど、黒い閃光を収束させた防御で迎えられなかった点は不覚だった。
受けて後ろに下がりながらバランスを崩す。崩されたバランスは即座に立て直して次は黒い閃光が帯びた掌で拳が受け止められた。掌に収束した黒い閃光は本来の性質を発揮して弾ける。咄嗟で威力は低めだが、ダメージと同時に殴打が弱まって防御が圧倒した。
バチッ!
「ぐぁっ!? は、弾けやがった⁉」
「急に不意を狙った攻撃は酷いんじゃねぇかぁ!」
相手が弾かれて驚愕している隙を突いて攻撃する。勢いに乗って相手の顔面を容赦ない殴打を放った。
相手は顔面が殴られて大きくバランスを崩す。しかし、威力が不足して強打が鈍かった。それを踏まえて瞬時に【暗閃烈拳】を放つ態勢に入った。
「これでどうだぁぁぁあああ‼」
バチンっ!
「ぶはっ⁉」
ある程度の出力で【暗閃烈拳】が放たれて凄まじい強打を生み出す。不足した力を弾く性質が補って凄い威力が放たれた。
相手は地面に転がった。凄まじい威力の殴打を受けて立ち上がれない様子が窺える。それを見た泰介さんは驚愕したような声を上げる。
「ほう? 異術を使わせる間もなく倒すなんてやるなぁ? 困ったぁ。今から戦える奴がいない⁉」
「どうやらお前は戦えないみたいだな? それなら今すぐに殺してやるよ!」
「ふっ! そんなに容易く死ねる訳がないだろ? 奥の手を使わせてもらう!」
すると、倒れた男に近付いて懐から札を取り出した。それは見た感じだと妖怪が封印された札で倒れている男の身体に張り付けて封印を解いた。
「こいつをくれてやる! あいつを殺して来い!」
「なっ⁉ 妖怪を憑りつかせたのか⁉」
札が光り出して凄まじい妖力を解き放つ。男は一瞬で妖怪に乗っ取られて豹変してしまう。
豹変した後の男が急に飛び跳ねて立ち上がる。これは妖怪が身体を支配して男に出来ない動きを実現させている。
男を乗っ取れた妖怪は不気味な口調で解放された気分を吐き捨てる。
「ぎゃーっはっはっは! 凄く気分が良いぞ! 契約してから当分は封印されて退屈だったんだよぉ! 今回も標的を殺せれば褒美がもらえるんだろ?」
「もちろんだ! 良いから今から指定した奴を殺せ! そうすれば褒美はもらっても良い!」
「悪いなぁ? 俺は人間の下で働いて褒美を頂いて生きて来たんだぁ! これまで取り込めた餌で凄い強化されたんだよ! そんな俺を貧弱そうなガキに祓えるかな?」
男が憑依されて妖怪として祓わないといけなくなった現状で俺は覚悟を決めた。
完全に肉体を妖怪が受肉して男は再び人として復活を望めない状態だった。この一件を片付けるために器でもある肉体が発動不能状態となる必要性を迫られる。だから、男の死は確実だと言える。
(やるしかないだろう。生還するためにも倒して突破しないといけない。それは死んでしまったと判断するのが適切で肉体を散らす他に方法はない)
決意が固まって俺は目前の妖怪を祓う準備が整えられる。
俺が動けるように少し身体を慣らしてから妖怪に視線を戻した。それを窺った妖怪は俺を殺す行動を取った。
「行くぞぉぉぉおおお!」
「来い!」
妖怪が身体から触手を伸ばして来る。触手は俺を目掛けて伸びると先端が尖って突き刺そうとする。
しかし、黒い閃光を帯びている腕で払って弾いて散らす。
「所詮は触手でしかないな? これなら出力は大して出さなくても問題ない」
「くっ! どうやら弾ける黒い閃光河操れるらしいな。それだと触手の硬度を上げようじゃねぇか!」
「それで散らさない訳じゃない。出力を上げれば良いんだからよぉ!」
俺は向かって来る触手に自ら接近して弾き飛ばしながら距離を縮める。触手が弾けて妖怪に攻撃が当たるところまで詰めた。そこから俺が【暗閃烈拳】を放つ。
「案外容易く倒してもらえるんだなぁ!」
「何ぃ⁉︎」
ドカーン!
男を憑依した妖怪が吹っ飛ばされた。顔面を殴られた妖怪は黒い閃光に触れて弾けた末に大きく損失して血が噴き出ていた。そこから頭を生前と異なった形状として作り直すと再び立ち上がる。
まだ妖怪として機能するが故に戦える状態を目で確かめる。こいつを倒すための手段は取り憑いた本体を消滅させることだと理解した上で戦闘態勢を整える。
「どうやら動けそうなんだな? それじゃあ少しだけ本領を見せてやろう」
「ぐぬぬ……! 小癪なぁ!」
妖怪が本当の姿を見せて戦闘態勢が取れる。今から始まる一戦が本番だと言えるのなら次こそは確実に仕留める方針を取る。
「「行くぞぉ!」」
俺は走って妖怪に近付いた。相手からも接近して攻撃が交わる。異質な形状を見せる妖怪は尖った先端で貫こうと触手を伸ばして攻撃する。鋭い先端が突き刺すために色んな方向から伸びる。その直撃が近い方から黒い閃光を帯びている腕で弾き飛ばした。
「それで倒せると思ったか? そもそも触手で倒されて堪るかよぉ!」
「畜生ぉ⁉︎ これだと倒される⁉︎」
徐々に妖怪を攻撃可能となる距離が迫って来た。そこで妖怪が本気を込めた先端を突き刺して来ようと伸ばした。しかし、それでも瞬時に黒い閃光が帯びた拳を打つ。弾ける肉片が散らばった瞬間は妖怪の隙が窺えて攻撃を加えるチャンスとして決めた。
「暗閃烈拳ぅ!」
「うぎゃぁぁぁあああ⁉︎」
妖怪の本体が【暗閃烈拳】で消し飛ばされた。弾け散った肉片と共に姿を消した妖怪は見事に祓われる。これで出口を目指して行ける段階が整った。
「ふぅ! 大したこともなかったぜ!」
すると、後から海乃と穂波が駆け付けて来ると抱き付いた。涙声で安心感を抱いたような一言を発して俺は凄く達成感が内心に起こった。
「とにかく終わったんだ。今回は一旦帰りたいと思う。二人とも付いて来きても良いぞ?」
「ありがとう! お願いするね!」
「嬉しい!」
初めて年下の女の子から受けた感謝だった。あまり人から受ける気持ちは大して気に掛けたこもはなかった。けど、初の経験で困惑しながらも慣れない実感を受け止めた上で次の一件を解決したいと考えた。
この後は無事に雪姫さんと合流を果たした。真実を話すと雪姫さんは驚いて唇を噛み締める仕草が見受けられた。それほどまでに悔しく思ったのだと捉えられた。彼女を敵に回したことは大きく予測から外れた結果を生み出すと先が恐ろしくなる。
けど、俺は雪姫さんの力を頼り過ぎるつもりはない。茂国だけは俺が倒してこそ意味があると考えている。それを叶えるための期間を設けて準備する予定を入れた。
帰還してから真実がお父さんにも報告された。しかし、それでも大した反応は窺えなかった。もし片付けたい意思があるなら自分で解決する余地を与えられた。
この瞬間が俺の決断を即座に出せた。
「俺が戦います。共に行く者は一人で構わないです。それ以上は不要だから着いて来なくて良いと考えています。奴らを思い知らせて償わせないと気が収まらないです。元から叩き潰して罪を償わせてやるんですからね……!」
「承知しました。ならば、私に同行させて頂けないでしょうか? すでに同行するための承諾は取れています。いつの出発でも構いません。私が全力でサポートします!」
「ありがとうございます。それなら力を貸してもらいたいです。それじゃあ事前準備として三日間の修行を見てもらえませんか? 三日間で準備を整えたいと思ったます」
「喜んで受けさせてください!」
そんな感じで俺は生還して残った問題の解決を予定した。
標的は黒森茂国を倒して組織の撲滅だった。これが遂行されない限りは社会は陥れ続けるだろう。だから、間違った未来を迎えさせないための終止符を打ちたかった。
そして修行は始まった。もちろん今回の三日間を通した修行に美兎を参加させる。後は引き取る予定だった海乃と穂波を加えて今後に活かせる道を辿らせる。
「今回は悪い。お前が頼らない訳じゃないから落ち込まないでくれないで欲しい」
「分かってるから大丈夫!
楽典様はちゃんと考えた上で決断したんでしょ? それなら私は咎めないからね?」
「ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいよ」
それだけ美兎に説明すると納得してもらえた。それを迎えられて安堵する他にないぐらいに気持ちが軽くなった。
すると、今の光景を見ていた海乃と穂波が震えながら呆然としていた。
それを踏まえて可笑しいことでもあったか尋ねてみると二人が出した回答は凄く驚愕だった。
「楽典さんはすでに相手がいたんですね……?」
「同じ未成年で関係を持つことが普通だと思わされて凄い困惑する〜」
「あまり触れないでもらえないか? 二人ともうちの組織に加わるんだけど大丈夫だよな?」
「「はい!」」
二人はうちで生活する許可が取れたので、今後は協力しないとやって行けない。だから、俺と美兎の関係性を問題視されることは控えたかった。
「取り敢えず必須事項だけこなしましょう。申し訳ないと思うんですけど、残る二人に関しては留守を頼みたいと思います。理由は未熟だと死亡率が高いから不安なんです。だから、二人が着いて来られると困る。分かりました?」
「「はーい!」」
こうした修行が開始する。
俺は許せない気持ちを抱きなが修行をこなした。それも異術を用いて次なる敵を倒すために必要だった。
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