第10話「二人の挑戦者」
侵入してからしばらく時間が経過した。
(もうかなりの人数を葬って来た。生かして置いた奴も何人か残したが、後から追って来ることはないだろう。実力差が分かって掛かって来たなら殺す他に選択肢は残ってないからな)
俺が走って向かった先で一旦停止する。目前に大きな扉が構えているところに差し掛かった。
「これを破壊して突破するしかない。軽く【暗閃烈拳】でぶつ破れるはずだ」
そうやって俺は拳を黒い閃光で収束させて殴る準備を整えた。それから殴って突破を試みる寸前で扉が自然に開いた。
「どうやら無事に進めたようね? けど、ここから先は行かせないわ」
「だって私たちが貴方を始末する予定だから覚悟しなさい?」
そんな二人の声が上がる。俺の通りたい道に立ち塞がって足止めするつもりの女が二人で姿を見せる。
「どうやら少し戦いにくい相手が出て来たな……! まさか俺よりも小さい女の子を
戦わせるなんて酷い話だ」
俺は予想外の展開を迎えて少し戸惑ってしまう。しかし、彼女たちも同じ術師なら戦わないで進める訳がないと考える。
どうしても倒さないと進めないなら最小限の力で戦うしかないと判断した。彼女たちの歳で犯罪に絡ませている奴が非常に腹立たしくてしょうがなく思える。
すると、目前の二人は余裕を持った言葉を返して来る。そこから窺えることは本場の一線を知らない子供だと言うところだった。
「はぁ? 小学六年生だからって舐めないでもらえるかな?」
「貴方を殺すことなんて容易くてしょうがないんだからね!」
(きっと甘やかされて来たんだろう。術師として十分とも言える戦闘能力が備わっているかも分からない。けど、立ち塞がったのなら勝利した上で正しい道が示さないと将来が危ない。それなら勝つしかない……!)
本来の目的と大して変わらないが、それでも多少は寄り道するのも良いと考えた。彼女たちを救う算段があれば問題はない。だから、俺は加減しながら二人を倒す決心を抱いた。
「それじゃあ早く始末しようか?」
「そうだね!」
二人が身構えた時に片方が霊力を使って霊術が発動される。
片方は霊術を発動させたことで何と二人ほとの分身が出来ていた。つまり、彼女が扱う霊術は自身を増やす効果が現れる類と見ても良かったはずだ。
(取り敢えず相手は四人となった。しかし、実際に修行笑積み上げて来ていた場合は苦戦する可能性が高い。けど、現役の小学生なら少し倒せる自信があるかもな……!)
俺まで構えた姿勢を作る。これから女子小学生と交戦する運命を迎えて加減が利かせる一戦が開始される。
「行くわよぉ!」
「うん!」
最初に動き出した二人と分身が三体とも攻めて来る。正面から同じ人物が一斉攻撃を仕掛けて俺を翻弄した上で勝利する意思が見られた。
もう一方は俺の背後に回って攻撃する準備を完了させて待機している。けど、私は侵入してから使っていた天術で相手の位置を把握する。
「これでも食らえ!」
「お前たちの場所は分かっているんだよぉ!」
「——え?」
俺の拳が女を目掛け腹部に直撃した。実際に天術を行使して相手が特定されても不利は根本的に不利は一変しない。
しかし、戦況は俺が独占しても可笑しくないぐらいの余裕は残っていた。人数で負けている時点で普通なら不利が見込まれる。だけど、俺を襲う奴の姿は視線を向けなくても全てお見通しだった。
「ぐはっ!? ば、バカな⁉」
「お前を捉える時に視界に入れる必要はないんだよ」
「ふざけんなぁ!」
今度は分身した方から自身に武器を握らせて攻撃する。魔剣を握った相手は全員で四は倒せないといけない状況下は一般術師なら苦戦は決定したはずだと考える。しかし、それでも彼女を攻略する手段は交戦で自然と掴める自信があった。
「はぁっ!」
一人目が斬り付けて来るが、簡単に回避して次を待つ。今度は左右から来た相手が
下す攻撃から巧みに回避した上で片方に肘打ちで顔面を直撃させた。
それから続けて回避された余韻で次の攻撃に移れない方を殴る。殴られた方は後ろに吹っ飛ばされて倒れる。
残る一人が止められない攻撃を続けた瞬間に素早い回避から回転蹴りを食らわせる。勢い良く彼女を捉えた攻撃は顔面に直撃して大きく宙を浮いて倒された。
この時点で四人は圧倒した俺の実力を知って心が取り乱れる。内心で圧倒された理由が分からない状態を作らされた二人は立ち上がって怒鳴り散らす。
「畜生ぉ! こんなところで負けて堪るかよぉ! もう私たちは引き返せないんだからぁ!」
「お前に負けて終わらせて良い人生なんてある訳がないだろぉぉぉおおお‼」
再び立つ上がった四人で一斉に攻撃を仕掛ける。その無謀すぎる攻撃に対するカウンターを決める姿勢を取ってベストタイミングが窺えるところで順番に反撃する。
「はぁっ! てぇっ! やぁっ!」
「「「「ぐふぉっ!?」」」」
「これで終わりだ。最後まで戦い抜けたところは良かったかも知れないわ」
四人が攻撃された順番の通りに倒れて動かんくなる。まだ意識は残っているようだが、実際にしばらくは起き上がれないと判断する。
そこで俺から二人に向けて質問が投げ掛けられる。それは何で詐欺霊媒師が集う組織と手を組んでいたのかだった。
この最大の疑問点を晴らさない限りは彼女たちを刑務所に送る運命が定められてしまう。だから、真相を知りたかった。きっと戦いたくて入った訳じゃないと信じながら。
「幾つか質問する。適切な回答を聞かせろ」
「うっ……だ、誰がお前なんかにぃ……⁉」
「良いから早くしろ。ここの頭をぶっ飛ばして組織は潰すために来たんだ。それも依頼だけどな?」
「く、くそぉ……!」
俺はゆっくりと片方に近付いて後で動けるか確かめる。それが終わってから二人を並べて質問を始めた。
「二人の名前を教えてくれないか? 後は事情が知りたい」
「私は不城海乃。小学二年生の時に両親が亡くなって黒森茂国様の養子になった」
「私も小学二年生に上がってから近い日に両親を失って養子として引き取られた。私たちが出会ったのは同じ日だったわ」
この後から語られる事実は真相が隠されていた。真のボスは依頼人として尋ねて来た執事を雇う財閥の当主、黒森茂国だと二人は証言する。
「これは仕組まれた一件だったのか……?」
「詳しくは知らない。けど、私たちは茂国様の養子であることを隠して生きる人生を命じられた。そして九歳を迎える前々から徐々に表れていた霊術を完全に使いこなせるまで修行させられたのよ」
「地獄だった。日々が一転して学校は通わせてくれない。ひたすら修行して学ばされた霊媒師の知識。それを利用して人を欺く術を叩き込まれて十歳を迎えた後半から活動するしかなかった」
二人は茂国の命令で霊媒師として名乗って信じた者たちを騙して回る人生だったらしい。時に人を殺す必要があって泣きながら葬って来た過去が今でも忘れられない記憶に残っていると言う。二人の歩んでいた道は不正を代わりに働かされて心が痛んでも辞めさせてくれない日々の連なりだと語った。
取り敢えず彼女たちが送った悲惨な人生は理解した。これで本当の相手が分かった気がする。標的が定まったことで奥地を目指す意味がなくなった。今は引き返してお父さんに報告する方が優先だと考えて二人を起こす。
「動けるか? 凄く痛かったはずだ。真面に動けないなら無理しなくても良いけど」
「本当に戦うつもりなの? 相手はもの凄いやり手だよ?」
「聞いた話だと茂国は修行が十分に積めていないと聞いた。なら、倒すことは容易いだろう」
「違う! あいつは修行を積まないはずがない!」
「だって偶に私たちが勝てなかった奴を目の前で殺していたわ! しかも、半分は蜘蛛だったのよ!」
「蜘蛛……?」
俺は二人の証言を聞いて謎に思った。しかし、それが最近から特訓していた妖術だと気付いて驚愕する。
「茂国が妖術を扱えるなら相当の術師ってことだな?」
「水から生成された蜘蛛の糸で縛り上げて圧縮させた空気で消し飛ばすとことは見たわ!」
(圧縮した空気が放てるのか? つまり、霊術は空気関連で妖術は水の蜘蛛で間違いかも知れない。もしかすると俺でも倒せない可能性が出て来た)
「それじゃあ一旦本部に戻る。後の一件は他で任せて置けば大丈夫だろう」
「ほ、本当に帰れるの?」
「お前たちは連れて行かなくても良いのかよ?」
「「行く!」」
そんな感じで俺たちはとにかく帰還するために元の道を引き返す予定が立てられた。
取り敢えず気付かれる前に退散したかった俺は二人を連れて走り出す寸前で二人の男が立ち塞がった。
「おやおや? 秘密を漏らして逃げようなんて思ってないよな?」
「わっ⁉ あ、貴方は……!」
「どうもぉ~? 久しいねぇ?」
(誰だ……? どうやら仲間が到着したのか? 少し厄介だろうけど、倒しながら進めれば出口から出られるはず)
そうやって俺たちが逃走する前から道が塞がった。目前に現れた二人の正体は意外にも依頼を持って来た藤平泰介だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます