小説家の魚売り

かんな@バーチャルJC

サンマ式か、クジラ式か。あなたの作品は何を売る?



 長年愛用しているマグカップについた茶渋ですが、綺麗にするには重曹の漬け置きがポピュラーですね。ですが最近になってメラニンスポンジでも手軽に取れることを知って、個人的革命中のJCです。




 さて、今回は小説(または創作品)の宣伝の方法についての自説です。


 昔に比べると、SNSなど便利なサービスが出ていますが、情報過多によって埋もれるというアンビバレンツなバランスがフィーバーしちゃっていますね。

 ツールやサービスが増えても、個人作品宣伝の難しさは昔から変わりません。


 比較的平均的な広告方法というのはあるのですが、最終的にコスパ最高になるよう、作品に対してその都度、宣伝方法を工夫することが必要になります。

 このあたりのノウハウを大量に持っているのが広告代理店です。

 ですが代理店のやり方を表層的に真似たところで効果は出ません。


 特に個人活動においては、創作自体にコストを掛けたいので、コスト最低・パフォーマンス最大という夜マックを2個食べるような欲張りセットとなります。

 一見、無茶なように見えますが、戦略次第では狙える範囲にあります。


 結論を先に述べると、まずは手軽に手に取らせ、次に“馴染み”にして離さないこと──これが最大のポイントです。




 ひとつ例え話を。


 最近はめっきり見なくなりましたが、スーパーの中でも、商店街でも良いので、魚屋さん(鮮魚売り場)の声掛け営業を想像してみましょう。


「季節のサンマですよ~! お安くなってますー」


 よく聞くようなフレーズですね。シンプルで分かりやすく消費者に訴えるパターンです。

 これは、その場で消費者が買ってくれるかどうかが勝負の、即効性のある黄金パターンと言えます。

 小説で言うなら、


「読みやすいラノベ! 5分で1話読めますよ!」


 という感じでしょうか。


 サンマが消費者の夕食のイメージとマッチしなくても、安い(コストが少ない)のであれば、ひとまず手に取ってみたりします。手に取ったら、買うかどうかは半々なのですが、少なく見積もっても50%の確率となって反映されます。

 好きなジャンルでなくとも、手軽に読めるなら冒頭だけでも読んでみようか、という行動を狙うならこれでしょう。(消費者行動心理)


 これは即決式で、ひとまず数字やスタートダッシュをするときに有効な戦略です。

 数値を取り敢えず上げたい場合に使うと良いでしょう。


 一方、数値だけ追い続けても、短編でなければお客様の方が息切れや飽きがくることが多くなります。


「アジが安いですよー」


 と、連日繰り返しても、売上の貢献は減少傾向になります。特にスーパーのように、日替わりで売る人も変わってしまうと、印象すら残りません。

 ティッシュやフライヤー(チラシ)の手配りも、このパターンですね。


 そこでひと工夫してみましょう。文言を変えてみます。


「あ、いまこのサンマが、貴女のこと好きって目で見てるよ!?」


 いわゆるキャッチフレーズです。(ここではカクヨムシステムのキャッチフレーズ機能とは別の意味です)

 フックとも言いますが、いつもとは違う、でもお人好しそうな人が、毎日フレーズにアレンジを加えるながら行うことで、効果が変わってきます。


 最初は「何だそれ?」とか「アホなこと言ってんな」でスルーされることの方が多いですが、声質と顔が馴染んでくると、ちょっと興味が湧いてくるのが人情です。


「あ! ホッケが骨抜きにされてる! これはヤバい!」


 実際には骨抜きなんて売ってなくとも、「骨抜きってどんなだよw」とクスっと笑う部分にフックが掛かれば、手に取るかも知れません。ここでも50%の確率が発生します。また、「骨抜き」というキーワードで、購買層とミスマッチな人、例えば大阪の魚屋なのに鳥取の消費者にも、低い確率ですが届く場合もあります。可愛いメイドさんに「骨抜き」にされたいと思ってるコンカフェ客にも届きます。(リーチ範囲の拡大)


 このフック方法は、即効性はほとんどありません。代わりに持続性を強化する手法となります。

 いつの間にか「馴染になったアホなことをいう魚屋さん」というレーベルになります。遠くのコンカフェ客も、出張などでお魚を食べに来るかもしれません。

 これがブランド化戦略です。モノ自体にブランドを付けるのではなく、のです。(やり過ぎると奇人扱いされますが)


 このフック方法は持続性がポイントとなります。同じ時間、同じ場所、違うフレーズ。これがお客様に対しての安心感や安定感、ちょっとした変化の楽しさという、プラス印象に働きます。

 ですが、この方法はコストが掛かります。一週間やってダメだったら諦めるということは出来なくなります。

 始めたが最後、半年だろうが一年だろうが、地道に繰り返していきます。


 小説の場合、長編完結済み作品や長期連載中の作品などはこの方法がオススメで、最終的な数値とパフォーマンスのバランスは、良好になります。つまり総合コスパは悪くないのです。

 完結作品が安心感に繋がり、ブランドに直結するのもそうですが、丸一日、自分の言葉に誰も反応しなくても、悔しい思いをしても、飄々ひょうひょうとフレーズパターンを変えながら売り子を続けます。


 世の中は厳しく、競合は増える一方で、努力が必ず結果に結びつくとは限りません。どんなにお客様を笑わせても、肝心の魚の質が悪ければ信用を失い、たった一日でも手を抜いて、「魚売ってます」と目に留まらないことをすると、印象がリセットされる場合もあります。(ブランド維持の必要性)


 広告行動は、一つの手法に固執すると失敗しますので、


 魚売りも、毎日夕方4時に同じ人がやっていてはその人のメンタル(コスト)が跳ね上がります。なので、水曜日はアルバイトに任せるなど、ちょっとした工夫を散りばめる必要があります。(リスク分散)


 週中では淡々と「エピソード公開しました」と呟き、週末はフックを使った呼び込みを呟くなど、経験と実績(データ)を重ねながら工夫していきます。


 スーパーや魚屋さんの声掛けも、小説作品の売り方も、根本は変わりません。

 アルバイトでも接客業をやっている人の方が、売り方が上手いのもこのためです。

 何をすれば、道行く人が振り向いてくれるかを、経験と実績で知っているからです。(PDCAサイクル)



 そして、意地の悪いことに、X(Twitter)は似たような文言やURLアドレスが自分のタイムラインに続くと、評価を下げます(スパム判定)。

 つまり土俵自体の設定が、シビアになっているのです。時折「Xでの宣伝は意味がない」という人が出てしまう理由の一つです。

 これはサービス設計上仕方のないことですが、そういうゲーム盤(ルール)という理解があれば、攻略方法もあります。(エリア調査)


 ここではX(Twitter)利用の具体的方法は本題から逸れるので述べませんが、特に小説という文言を扱う作品を売りたいのであれば、やはり言葉の力を信じるのが良いでしょう。


 ひとまずランキング上位に載ることを目指す方法、そして地道にフックをアレンジして定着させる方法。

 これらを上手く組み合わせつつ、自分の土俵を冷静に分析(リサーチ&チェック)することで、必ず結果に繋がります。(良い結果とは限りません)




 筆者の場合はSFという土俵ですね。SFジャンルタグ自体は盛況ですが、ハードSFはニッチ市場です。

 シャケやアジといった売りやすいものではなく、クジラの刺身です。(刺さる人には刺さる商品)

 安価でもなかなか手に取ってもらえないので、最初の段階からランキングに載せる事自体が無茶な戦略になるので、広告プランからは切り捨てています。


 ハードSFのようなクジラの刺身でも、導線を複数持ち、地道に馴染ませれば少数ファンを着実に集められます。(リピーター確保。ただし時間はかかります)


 なので筆者は、反応の見えにくい近況ノートの冒頭やnoteといった、効果が薄くても、他からの導線確保を地道にやる戦略を採っています。

 昔ながらの「ちりつも(塵が積もって山となる)」方式とも言えますが、残念ながら山になるか雪崩れるかはわかりません。

 しかしやらなければ、確実に海の底に沈むでしょう。(Do/Action)


「最初にざまぁ系で売れてから、好きなの書けばいいんじゃね?」


 これは最も説得力があり、確実性の高い戦略です。

 本格的にプロを目指す、もしくはインセンティブで利益を得たい場合は、この方法がオススメです。


 筆者がやらない理由は単純で、魚屋のバイトを毎日やるのはシンドいから、水曜と金曜だけやる──となってるからです。当然その分収入が減るのと同様に、読者がつきにくい状態なので、当然の帰結です。


 それでも活動開始してから一年近く経ち、小さな丘くらいにはなりました。行為によって発生した順当な結果だと受け止めています。(冷静な分析と改善条件の把握)


 コスパ・タイパを求めてインセンティブ狙いであれば、正直、小説書く時間でスーパーでバイトした方がいいのですけれど……




 最後に大事なことを。

 人は第一印象が強く残ります。不衛生な姿で鮮魚売りを行えば、当然売れるどころかスーパー・魚屋が潰れます。

 最低限の清潔さ(読みやすい日本語)を心がけると良いでしょう。


──と、蒸れた脇の下をボディーペーパーで拭きながら、JCがほざいていました。



どっとはらい。




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