短編小説 あの日消えた君達へ
@katakurayuuki
あの日消えた君達へ
あの番組のせいだったと思う。
高校生を屋上で何か叫ばせて下にいる同級生の反応をするという番組だ。
私の高校にもある日その番組が来たのだ。それはもう大騒ぎだったと思う。
ああいうのってだいたい目立ちたい奴や、結果がわかってるのに後ろから押してほしいなんて贅沢な奴とかが使うんだ。
まぁ、それはいいんだ。
問題はその屋上に呼ばれた生徒の中にいやいやつれてこられた生徒が一人いたことだ。
後で話を聞くと、その日病欠が何人か出てもっと生徒に出てほしい事になった時にいたずらな生徒が一人内気でとてもそういう所に出るような生徒じゃない人が出たのだ。
悪い奴がいたんだ。
内気な子はクラスのマドンナ的存在に惚れていたのがバレバレだったけれど、それをかくして生活していた。それを面白がっていた一人が勝手に名簿に加えたのだ。
その日出ることになった彼は大慌てで出たくないと言われたが、周りの生徒や先生、はては校長までもお願いされてしぶしぶでることになったんだ。
彼にとっては大きな声だったかもしれないけれど、それは後でマイクに入った小さな声を大きくして編集しただけで、実際はぼそぼそと何言ってるかわかんなかったんだ。でも、下から焚きつけてる奴がいて、「聞こえねーーよ!もっと大きな声出せよ!」とか言ってさ。
結局そのマドンナは佐藤さんっていう名前だったんだけれど、
「佐藤さん付き合ってくれませんか」
って私たちにも聞こえるようにいったんさ。もう顔真っ赤で。
そしたら佐藤さんはしょうがない感じで、
「ごめーーん。」
って返す。それだけ。それで終わりのはずだったんだよ。
でもそれで終わらなかった。
その屋上で告白した加藤君。その加藤君が自殺したって次の週の月曜噂が回ったんだ。
日誌にその日されたことの復習として僕は死ぬとかなんとか書いてあったらしい。
告白したところの前のほうに進んだら落ちるだろうってところの地面に死体があったって。見たくなかったけれど、友達に連れられえて見に行ったら赤いのが地面ににじんでてぞっとした。
そしたら学校問題になるじゃん。保護者会は呼ばれるし。でも番組は放送したあとだから関係ないって言われるし、色々問題あったのよ。
告白された佐藤さんは沈鬱な表情でさ。それからは今までのようには言い寄ってくる人もいなくなってそのまま進学してそれっきりになっちゃった。
結局死んだこの家族も引っ越しして誰もこれ以上騒がなかったから、この話はタブーみたいになってしぼんでいった。
「っていうのがあんたが死んだって聞いてからの話なんだけれど、この南の島で佐藤さんと店を開いているなんてどういう意味?佐藤君?」
「悪い悪い。あの時は面倒でさ。うるさかっただろまわりが。だから一計を案じたんだ。告白して失敗して自殺する。血のりとか絵の具とか肉の血とかいろいろ混ぜて人型にして地面に置いたけれど警察は人が死んだとは思ってなかったと思うよ。ただ、俺はもうあそこでの生活に嫌になってたし、佐藤は大学卒業したらそっちで結婚しようって言ってくれたからそれまで結婚資金ためてたのよ。一番の友達のお前に言わなかったのは悪かったと思うよ。それは本とごめん!だから佐藤が卒業と同時にネタ晴らしして結婚式にも読んだから許して!うちの民宿もタダで使っていいから。」
「当たり前だわ!どんだけあんた達の事を心配したと思ってるのよ。」
「ごめんねーーーーー。」
遠くから佐藤さんが魚をさばきながら謝っている声がする。なんだかもう自然に暮らしてる感じがして今までの怒りがすぼんでしまった。
まぁいいか。おわりよければなんとやらかな。
短編小説 あの日消えた君達へ @katakurayuuki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます