イマジナリーフレンド

実在しない友達

「わっ」


彼女は少し声をあげて驚いた。


「急に現れるとやっぱちょっとびっくりするね」


靴を履きながらこっちを見る。


「なかなか慣れないなぁ。まあタイミングちょうどいいから一緒に行こうよ」


玄関のドアを明け彼女は外に出る。そのまま軽い足取りで歩き始めた。



「ねぇ、どこに行くか分かる?」


日が落ち初め、少し涼しくなってきている。


「正解は~、ゲームセンター!一人で行こうと思ってたけど友達がいた方が楽しいと思うから嬉しいな」


ほとんど人が通っていない道に声が響く。


「私、誰とでも友達になれるからね。だから君も友達だよ」


そう言って彼女は友達に向ける笑顔を浮かべた。


「それよりさ、周りの人から見たら変な人に見えてるのかな?私、君に話してるけど君は見えないからさ。」


彼女は警戒するように大げさに周りをキョロキョロと見る。


「まぁ気にしても仕方がないし、気にしないでおこっと。君と出かける方が大事だし」


彼女がそう話しながら歩いていると、ゲームセンターが見えてくる。


「おっ、もう着いたの?なんか一瞬だったね」


小走りでゲームセンターの入り口の前に向かっていく。そしてそのまま彼女は中に入って行った。


「何しよっかなー、私ゲームセンター結構好きなんだよね」


ぶらぶらと歩いて周りのゲーム機を見ている。


「あ!」


何かを見つけた彼女はそこに向かって行く。


「ねぇねぇ見て、クレーンゲーム。私得意なんだよね。やるから見ててよ」


ニヤッと笑って彼女はクレーンゲーム機を動かし始めた。

彼女がボタンを押すとクレーンが動き、置いてあるぬいぐるみの上に止まる。


「よしっ」


そのまま降下してぬいぐるみを掴み上に持ち上げて、そして排出口に落ちた。


「やったー!取れた!」


彼女は落ちたぬいぐるみを取りどや顔で見せつける。


「やっぱ私上手いんだよなー、クレーンゲーム。あっ、今君運がいいだけって思ったでしょ?違うんだよなーこれが。私にかかったらこれも必然になるんだよ」


彼女は気分よく次のゲーム機に向かって行く。


「ほら、次いくよ」


彼女は手招きをする


「色んなゲームを楽しまないと、時間は有限なんだからさ」


そう言って彼女はいろんなゲームを遊んでいった。


「ほら、すごくない?」


ゾンビなどを撃つゲームでは高得点を取り。


「私、パーフェクトです」


太鼓を叩くゲームでは完璧にクリアしてピースをした。


「君にも恵んであげようか?」


メダルゲームでもメダルをすぐに増やして見せた。カップに入ったメダルをジャラジャラさせている。


彼女は他にも色々なゲームをしていき、時間は過ぎていった。


「楽しかった~。なんかあっという間だった」


取ったぬいぐるみを持ち、ゲームセンターを出て彼女はそう言った。


「プリクラとか撮った方がよかったかな?いやでも君が写れないか…」


家に向かう帰り道でも彼女はゲームセンターの事を考えて楽しそうに歩いていた。


「君は楽しかった?」


彼女は急に問いかける。


「もうすぐ君とお別れになりそうだから聞いておきたくて」


静寂が訪れる。彼女に対する返事はない。


「君が少しでも楽しかったなら嬉しいなー。だって私は君の友達だから」


彼女は笑ってそう言う。




「この想像イマジナリーの物語の世界での友達、だけどね」



「あっ、安心してよ、またここに来てくれたら君はいつでも私の友達だから」



「また、私と友達になりに来てね」






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