Shining silver snow*②
わたしは両目にいっぱい涙を溜める。
こんなわたしのこと、ずっと想っていてくれてたんだ…。
胸が痛い……。
苦しい……。
そしてじっと見つめてきた。
「嫌なら振り払って」
「え…」
お母さんの手、
元カノのめいちゃんの手、
ぎゅっと掴めなかった
それなのに、わたしを想って振り払われようとしてる。
「っ…」
「――出来ないか」
「ごめん、意地悪だったね」
わたしは首を横に振る。
言わなきゃ……。
自分の為に……。
お互いが、前に進み、幸せになる為に……。
わたしの全身が震える。
「
「あり……がとう……」
「わたしの事……、好きだって……言ってくれて……ありがとう……」
「だけどごめんなさい」
それを聞いた
左手で自分の顔を隠す。
「俺……、
「本気で好きになって……良かった……」
大粒の涙がわたしの頬から滑り落ちていく。
「…保健室、連れて行くよ」
わたしは眉を下げて笑う。
「大丈夫、教室に戻ってわたしは家に一人で帰ります」
「一人で?
「…………」
わたしは黙る。
「
「…わたし、“一人で生きて行く”って決めたので」
「飴をあげたのは俺だった」
「でも『体調悪そうだから』って」
「飴をあげるように言ったのは“
わたしは驚く。
「え…」
「席が離れた。だから諦める」
「本当にそれでいいの?
揺らぎたくないのに。
ねぇ
どうしてそんなこと聞くの?
パタパタッと駆けてくる音が聞こえた。
え、
「教室に戻って来ないと思ったらやっぱり!」
「
「うん、大丈…」
「嘘つき」
「
「マラソンでの勢いはどうしたの!?」
「私と
わたしは首を横に振る。
「違う」
「何が違うの!?」
両手の平にある飴をぎゅっと握り締める。
「わたし決めてたの」
「隣の席じゃなくなるまで
「何? その期間限定的な恋設定」
「隣の席じゃなくなったから諦めるの?」
「諦められるの?」
「っ…」
「席が隣じゃなくなったって関係ないよ」
「だって
わたしは驚く。
「え? わたしが?」
「うん」
「
「私は
「
「でもキス出来なかった」
「今も出来ない。それが俺の気持ちだ」
「って振られた。だから…」
「
あぁ、今、分かった。
わたしの幸せの為に言ってくれてるんだって。
「一人になるのは
「
わたしは涙を指で拭う。
「
「みんなと出会えて良かった」
「もう手遅れかもしれないけど」
「わたし、
「よし、じゃあ
*
「
「キミこそ
「一応聞いとく」
「なんで応援なんかしたの?」
「好きな人にはちゃんと幸せになってもらいたいから」
*
「――では、また3学期な」
帰りの
「よっしゃ! 今日から冬休みだ~」
男の子達、
「ねぇねぇ、どこで遊ぶ!?」
女の子達がそれぞれ盛り上がる。
池田先生は教壇から降り、教室から出て行く。
「ゆりりん、カフェ行かない?」
「行く」
あずさちゃんとゆりちゃんは一緒に教室から出て行った。
「
「うん」
わたしは短く答えた。
「…
「あっ、待って。
「…うん」
扉前で
すると
…え?
でも鞄あるから待ってれば大丈夫だよね…。
残りの生徒達も教室から出て行き、一人になった。
わたしはふわふわの銀色チェックの膝かけをかけ、机に顔を伏せて静かに泣く。
…教室に戻ったら
今、
カチ、カチ、カチ…。
教室の丸い時計の秒針が鳴り響く。
どのくらい時間が経ったのか分からない。
パタパタ。
近づいてくる足音が聞こえた。
ドキンドキン、とわたしの心臓が高鳴る。
――――ガラッ。
教室の扉が開いた。
わたしの体がびくつく。
扉を閉める音が聞こえ、
足音がわたしの前で止まった。
「大丈夫か?
わたしは顔を上げると
「これ…」
「今朝から体調悪そうだったから買ってきた」
わたしの両目が涙目になる。
わたしのこと、見ててくれてたんだ…。
「それとこれも」
「銀のミルク飴…?」
「これ、俺の飴」
「え?」
「飴を渡したのは俺じゃないって言ったけど」
「入学式の時」
「俺が持ってきた飴を
そうだったんだ…。
「……雪、綺麗だな」
「うん…」
「
「うん…」
何を聞かれるんだろう?
ドクドクドクドクと、わたしの心臓が物凄い音を立てる。
「
わたしは驚く。
「え…」
「
「あ…」
わたしは目を逸らす。
「……うん」
「…そうか」
「ならごめん」
「俺、その願い叶えてやれないわ」
え…唇が近づいてきて…。
ちゅ、と唇に柔らかいものが触れた。
「…?」
一体何が起こってるの?
頭の中はパニック状態で何も考えられない。
聞きたいのに言葉が出てこない。
「なんで今、俺がキスしたのか分かるか?」
窓の外で、ふわふわの雪が降る。
「
…あれ?
これ、夢の中?
だって、
わたしは驚いて椅子からずり落ちる。
「おい、
「大丈…」
気がつくと、頬にぽろぽろと暖かな涙が
頬を伝う涙は勢いを増して、次々と流れていく。
涙が…止まらない。
わたしの顔が熱くなった。
ちゃんと感触がある…。
夢…じゃない?
え…え…。
どうしよう…。
何か言いたいのに言葉が出てこない。
「…やっぱ、だめか」
え…。
「俺、諦めるわ」
待って。
違うのに。
体の奥から震えが込み上げてきた。
膝かけをぎゅっと抱き締める。
隣の席じゃなくなった。
諦めて一人で生きて行こうって思った。
だけど…。
抑えようもなく、あとからあとから涙が零れ落ちる。
やっぱり諦めたくないよ――――。
「
「…あー、なんだ」
「良かった。ほっとしたわ」
「夢じゃない?」
わたしは泣きながら尋ねる。
「うん」
「ほんとに?」
雪は降り積もっていく。
「隣の席になって22日間」
「少しずつ好きになっていった」
「隣の席じゃなくなったけど」
「彼女として俺の隣にいて欲しい」
「うん…
「クリスマスイヴだし、もっかいする?」
「うん」
わたしは短く答える。
わたし達は立ち上がり、カーテンに隠れる。
カーテンがまるで羽みたいだ。
黒のパーカーを脱ぎ、わたしの背中にふわりとかけてくれた。
頭を撫でてパーカーのフードを被せる。
ふわっ…。
窓枠に座らされ、
愛おしい目で見つめられ、わたしがぎゅっと両瞼を瞑ると、
「んっ……」
そして唇を離すと、うなじに甘いキスを落とす。
「ぁっ…」
わたし達は見つめ合う。
ふわっと、唇と唇が重なった。
「
「ぁっ…」
深くて甘すぎて…頭が真っ白になる。
「
「
わたしはぎゅっと
「何?
「だい…すき…」
顔を熱くしたわたしはとても小さな声でそう呟く。
「…俺も大好きだよ」
「んっ……」
とろけるような甘いキスが何度も降りてきて、その度に暖かな涙が零れる。
わたし達は、まるで雪のように、溶け合っていく。
空からしんしんと、白く輝きながら舞い降りてくる雪。
雪は止みそうにない。
「
「あぁ、するよ。何度でも」
背中が熱い。わたしの背中に羽が生えたみたい。
わたしは、めげずに前を向いてこれからもずっと、
今日、
ずっと隣にいます。
もう離れません。
Shining silver snow❅໒꒱
fin.
今日も隣の席でぎゅっとして。 ❄ 空野瑠理子 @sorano_ruriko
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