夏の終に、彼岸を覗き込む様な連歌集。盂蘭盆を過ぎ、彼岸まではまだ幾許かの猶予がある夕暮れに流れる、生温い微風にふと、気がつく事がある。庭の隅に育つ、秋の草花。何処かで聞いた声。蚊遣線香の匂い。蝉の声よりも、地草の虫の声が耳につく。そして、想う。諸行無常と、優しく穏やかな日を。連歌の流れは、どれもとても温かな目で彼岸を見つめている。そして彼岸と此岸はきっと、地続きなのだと教えてくれる。瑞々しい感性と美しい言霊に彩られた宝物の様な短歌集。
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