小さな傘の奇跡

花夏美

第1話

雨上がりの街角、ハルは濡れた靴を気にしながら歩いていた。空にはまだ黒い雲が残り、道端に小さな水たまりがいくつも光っている。

その時、ぽつんと小さな傘が空中で揺れて光った。「あ、あなた…誰?」

ハルが手を伸ばすと、傘の形をした小さな光の精霊がふわりと近づいた。「アメル…雨の精霊なの」小さな声が聞こえる気がした。

ハルは驚いたけれど、不思議と安心する気持ちになった。「じゃあ、一緒に町の困ってる人を助けよう?」

アメルの光に導かれ、まずは道端で転んで泣いている小さな子犬を見つけた。ハルはそっと子犬を抱き上げ、濡れた体をタオルで拭いてあげる。子犬の小さな尻尾がふわりと揺れる。

次に、角を曲がると濡れた荷物を抱えたおばあさんが立ち往生していた。ハルとアメルで荷物を運び、おばあさんは「ありがとうね」と微笑む。

街の小さな出来事に関わるたび、ハルの胸にはぽっと温かい光が灯った。見えないけれど、確かにそこにある優しさ。

「アメル、ありがとう。私、今日からもっと優しくなれそう」

アメルの光は小さく揺れて、夜空に消えていった。ハルは微笑みながら、明日の晴れを楽しみに家路についた。

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小さな傘の奇跡 花夏美 @Nyra

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