小さな傘の奇跡
花夏美
第1話
雨上がりの街角、ハルは濡れた靴を気にしながら歩いていた。空にはまだ黒い雲が残り、道端に小さな水たまりがいくつも光っている。
その時、ぽつんと小さな傘が空中で揺れて光った。「あ、あなた…誰?」
ハルが手を伸ばすと、傘の形をした小さな光の精霊がふわりと近づいた。「アメル…雨の精霊なの」小さな声が聞こえる気がした。
ハルは驚いたけれど、不思議と安心する気持ちになった。「じゃあ、一緒に町の困ってる人を助けよう?」
アメルの光に導かれ、まずは道端で転んで泣いている小さな子犬を見つけた。ハルはそっと子犬を抱き上げ、濡れた体をタオルで拭いてあげる。子犬の小さな尻尾がふわりと揺れる。
次に、角を曲がると濡れた荷物を抱えたおばあさんが立ち往生していた。ハルとアメルで荷物を運び、おばあさんは「ありがとうね」と微笑む。
街の小さな出来事に関わるたび、ハルの胸にはぽっと温かい光が灯った。見えないけれど、確かにそこにある優しさ。
「アメル、ありがとう。私、今日からもっと優しくなれそう」
アメルの光は小さく揺れて、夜空に消えていった。ハルは微笑みながら、明日の晴れを楽しみに家路についた。
小さな傘の奇跡 花夏美 @Nyra
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます