『俺達のグレートなキャンプ98 山菜たっぷり和風炒飯で和食ソムリエを唸らせよ』
海山純平
第98話 山菜たっぷり炒飯で和食ソムリエを唸らせる
俺達のグレートなキャンプ98 山菜たっぷり和風炒飯で和食ソムリエを唸らせよ
朝の澄んだ空気が頬を撫でる信州のキャンプ場。テントがぽつぽつと点在する中、ひときわ賑やかな声が響いている。
「よーし!今日のグレートなキャンプは決まったぞ!」
石川が両手を高々と上げ、朝日を背負って雄叫びを上げた。その姿はまるで山の神に祈りを捧げる原始人のよう。隣で寝袋から這い出してきた千葉が目をこすりながら振り返る。
「おお、石川!今日はどんな奇抜なキャンプなんだ?」
千葉の瞳がキラキラと輝いている。まるで子供がサンタクロースを待つような純真無垢な表情だ。一方、テントから出てきた富山は既に疲れ切った表情で肩をがっくりと落としている。
「はぁ...また始まった。今度は何をするつもりなの?」
富山の声は朝の鳥のさえずりとは対照的に、どんよりと重い。
「ふっふっふ...」石川が意味深な笑みを浮かべながら振り返る。「今日は『山菜たっぷり炒飯で和食ソムリエを唸らせる』だ!」
「は?」富山の眉間にくっきりと縦じわが刻まれる。
「わー!面白そう!」千葉が飛び跳ねながら手を叩く。その様子は狂喜乱舞そのもの。
「聞け聞け!」石川が胸を張って説明を始める。「昨日の夜、隣のサイトで上品そうなおじさんが『私は和食ソムリエです』って自己紹介してたの聞いただろ?」
「あー、あの人か...」富山が遠い目をする。確かに昨晩、隣のサイトから聞こえてきた優雅な関西弁の声を思い出す。
「そのおじさんに、俺達の山菜炒飯を食べてもらって、プロの評価をしてもらうんだ!グレートだろ?」
石川がドヤ顔でポーズを決める。まるで偉大な発明を成し遂げた科学者のような得意げな表情。
「ちょっと待って!」富山が慌てて手をひらひらと振る。「勝手に他人を巻き込むの?しかも和食ソムリエって...プロ相手に素人の炒飯なんて...」
富山の顔が青ざめていく。まるで幽霊を見たかのような表情だ。
「大丈夫大丈夫!」千葉が富山の肩をポンポンと叩く。「石川の料理は意外と美味いんだぜ!前回のタケノコ丸焼きも最高だったし!」
「あれは炭になってたでしょ!」富山が声を裏返らせる。
「まあまあ、とりあえず山菜採りから始めようぜ!」
石川が勢いよく立ち上がり、大きなザックを背負う。その姿は山岳救助隊員のように勇ましい。
キャンプ場の裏手に広がる雑木林。三人は軍手をはめ、プラスチックの袋を持って山菜探しに出発した。
「おお!これはワラビだな!」
石川が茂みに突っ込んでいく。まるで宝探しに夢中になった冒険家のよう。ガサガサという音と共に、あちこちから「あった!」「これは?」という声が響く。
「石川、これってタラの芽?」
千葉が小さな芽を持ち上げて見せる。その表情は真剣そのもので、まるで重要な発見をした考古学者のよう。
「よし!それも採用だ!」
一方、富山は慎重に一つ一つの山菜を確認している。
「本当にこれ食べて大丈夫なの?毒があったりしない?」
富山の眉が心配そうにハの字になっている。まるで母親が子供の安全を気遣うような表情だ。
「富山は心配性だなあ!俺達ベテランキャンパーを信じろって!」
石川が豪快に笑いながら両手いっぱいの山菜を持ち上げる。
一時間後、三人は大量の山菜を持ってキャンプサイトに戻ってきた。石川と千葉の顔は達成感で満ち溢れているが、富山だけは不安そうに口元を震わせている。
「よーし!次は下処理だ!」
石川が作業台代わりのテーブルに山菜を広げる。その光景はまるで市場の野菜売り場のよう。
「ワラビはあく抜きが必要だな...」
石川が真剣な表情で山菜と向き合っている。その集中力は職人のようだ。
「石川すげー!本格的じゃん!」
千葉が目を輝かせながら石川の手さばきを見つめている。まるで師匠の技を学ぶ弟子のよう。
「まあ、キャンプ歴長いからね」
石川がちょっぴり照れながら答える。その表情には確かな自信がにじみ出ている。
お湯を沸かし、ワラビを茹でる。重曹を加えて一晩置く作業を手際よく進める石川。その姿はベテランの料理人そのものだ。
「タラの芽は天ぷらにするか、それとも...」
石川がつぶやきながら思案している。その表情は真剣勝負に臨むプロの料理人のよう。
「あの...」富山が恐る恐る口を開く。「もしかして、本当にあの和食ソムリエの人に食べてもらうつもりなの?」
「当然だ!」石川が力強く答える。「せっかくの機会だ、プロに評価してもらわないと意味がないだろ?」
富山の顔が青ざめる。まるで明日処刑される囚人のような表情だ。
昼過ぎ、いよいよ調理開始。石川が大きなフライパンを火にかける。その手つきは中華料理店の料理長のよう。
「まずは下味をつけた鶏肉から...」
ジュウジュウと音を立てて鶏肉が焼かれる。香ばしい匂いがキャンプサイト全体に漂い始める。
「うわー、いい匂い!」
千葉が鼻をひくひくと動かす。まるで美味しい匂いに誘われた動物のよう。
「次は山菜を投入!」
石川が下処理した山菜を豪快にフライパンに放り込む。その動作はまるでショーを披露するパフォーマーのよう。
パチパチと音を立てて炒められる山菜たち。そこに温かいご飯が加わり、炒飯の形が整っていく。
「仕上げは醤油ベースの和風だしで...」
石川が秘伝のタレを垂らす。その表情は芸術作品を完成させる芸術家のよう。
「おおおお!」千葉が感動の声を上げる。
完成した炒飯は確かに見た目が美しい。山菜の緑が彩りを添え、まさに和風炒飯という名にふさわしい仕上がりだ。
「よし!いざ、和食ソムリエのもとへ!」
石川が炒飯の皿を持ち上げる。その姿は聖杯を捧げ持つ騎士のよう。
「ちょっと待って!」富山が慌てて石川の腕を掴む。「本当に行くの?恥ずかしくない?」
「何を言ってるんだ!これは俺達の自信作だぞ!」
石川が胸を張る。その自信に満ち溢れた表情は、まるで勝利を確信した勇者のよう。
隣のサイトに向かう三人。富山は後ろでオロオロと手をもみ手している。まるで初めての舞台に立つ新人俳優のような緊張ぶりだ。
「あの...すみません...」
石川が和食ソムリエらしき上品な初老の男性に声をかける。男性は焚き火の前で優雅にコーヒーを飲んでいた。
「はい、何でしょうか?」
和田と名乗った男性が振り返る。その物腰は確かに上品で、和服こそ着ていないが雰囲気からして本当に和食の専門家のようだ。
「実は...山菜炒飯を作ったので、もしよろしければ...」
石川が皿を差し出す。その手は微かに震えている。
男性が目を細めて炒飯を見つめる。その視線は鋭く、まるでX線のように料理の奥まで見透かしているようだ。
「ほう...これは...」
男性がゆっくりと箸を取る。その動作一つ一つが優雅で、本当にプロの風格を感じさせる。
千葉が固唾を呑んで見守る。富山は後ろで両手を合わせて祈っている。まるで受験発表を待つ親のような表情だ。
男性が一口炒飯を口に運ぶ。
「...」
静寂が流れる。男性の表情は読めない。石川の心臓がドキドキと激しく鼓動している。
「...これは...」
男性がゆっくりと口を開く。
「素晴らしい!」
突然の絶賛に、三人が飛び上がりそうになる。
「山菜の下処理も完璧ですし、和風だしの効かせ方も絶妙です。特にこのタラの芽の苦みが全体の味を引き締めていて...」
男性が熱弁を振るい始める。その表情は本当に感動している様子だ。
「やったー!」千葉が飛び跳ねる。
「え?え?本当に?」富山が目を見開いて驚いている。
「いやあ、キャンプで食べる料理としては最高級ですよ。私も和食一筋30年ですが、こんなに自然の味を活かした炒飯は初めて食べました」
男性が再び一口食べて、満足そうに頷く。
「うおおおお!やったぞ!」
石川が雄叫びを上げる。その声は山々にこだまして、キャンプ場全体に響き渡る。
「石川すげーよ!本当にプロに認められちゃった!」
千葉が石川の肩を叩きまくる。その興奮ぶりは優勝したスポーツ選手のよう。
「信じられない...本当に美味しかったのね...」
富山が呟く。その表情は安堵と驚きが入り混じっている。
「ところで」和食ソムリエの男性が微笑みながら言う。「もしよろしければ、私の分も作っていただけませんか?材料費はお支払いしますので」
「え?本当ですか?」
石川の目が輝く。まるで思いがけない大仕事を任された職人のような表情だ。
「ええ、妻にも食べさせてあげたいんです。こんな素晴らしい料理は滅多に出会えませんから」
結局、その日の夕方、石川達は隣のサイトの夫婦と一緒に山菜炒飯パーティーを開くことになった。
焚き火を囲んで、美味しい炒飯を食べながら語り合う六人。キャンプ場の夕暮れが美しく、まさにグレートなキャンプの締めくくりにふさわしい光景だった。
「やっぱり石川のキャンプは最高だよ!」
千葉が満面の笑みで言う。
「たまにはうまくいくものね...」
富山も安堵の表情で微笑んでいる。
「また明日も何か奇抜なことやろうぜ!」
石川が星空を見上げながら宣言する。その表情は既に次の冒険を考えているようで、富山がまた不安そうな顔をするのだった。
夜が更けて、キャンプファイヤーの炎がゆらゆらと揺れる中、今日一日の成功に酔いしれる三人。明日もまた、石川の奇抜なアイデアに振り回されることになるのだろうが、それもまた彼らにとってはかけがえのない思い出なのだった。
遠くでフクロウが鳴き、川のせせらぎが聞こえる静かな夜。でも石川の頭の中では、もう次のグレートなキャンプ計画が練り上げられているのだった...。
『俺達のグレートなキャンプ98 山菜たっぷり和風炒飯で和食ソムリエを唸らせよ』 海山純平 @umiyama117
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